ミニレビュー
著者の水野さんが毎日欠かさず発行している「1回3分でレベルアップ!相手の心を掴むトーク術」という人気メルマガがあります。わたしも著者と同じく人前で話すことが多い商売なので、毎日とはいきませんが目を通しています。そのメルマガから生まれた本。
そういった成り立ちの本は、題材が身近で構成も平易になり、「構想○年!」みたいな本よりも読みやすいことが多いですよね。この本も、読者も見聞きしたであろう身近なニュースや有名人の言葉、あるいは著者の思い出話などを材料にして、コミュニケーションのあり方を語ってくれます。
たとえば第一章では、「8時だョ!全員集合」という往年のバラエティ番組に隠れた「つかみ」のテクニックを考えます。
いかりやさんはまずコントの冒頭、ステージに現れると、客席に向かって、
「オィーッス!」
とあいさつをします。すると客席から、
「オィーッス!」
と返事が。
そこでさらに、
「元気がいいねぇ。もういっちょ、オィーッス!」
と呼びかけ。観客たちは、さらに大声で、
「オィーッス!」
と返します。それを受けていかりやさんは
「ヨーシ!」
と返答します。
ここから著者は「相手が返事を返せるあいさつをすること」「そのあいさつ返しを受け取る間を作ること」「受け取ったという意思表示をすること」という、3つのポイントを引き出します。
なるほど。2つめと3つめのポイントを分けるところなんか、精緻に考えておられます。わたしも間を取って聴衆の反応を待つようにはしているつもりですが「受け取ったという意思表示をする」ところまでは気を配れていなかった。
そのほか、著者が肴に使う事例は、オバマ大統領やスティーブ・ジョブズのスピーチなど。おそらく少なからぬ読者は、目にしている話です。ともすれば、目新しい話がなくてつまらないという印象を与えかねません。しかし有名で身近な事例だからこそ、ていねいに学びを引き出していく著者の考えの深さというかプロ意識がそこに現れてきます。本の中の知識もさることながら、そういった姿勢に対して、タイトル通り心を打たれました。
(著者にご献本いただきました。ありがとうございます!)
(参考)
相手の気持ちをつかむ、あいさつの「1往復半」 – *ListFreak