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なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想


ミニレビュー

成功(失敗)企業の事例を分析したり成功法則を見出そうとするビジネス書。その著者が犯しがちな過ちを分析した本です。ビジネスに限らず、語学などの習い事・人間関係・さらには生き方にいたるまで、読書の有益なガイドになりそうです。

本のメッセージは一文に要約できます。それは、【ビジネス書の著者は、企業の成功や失敗の要因をむりやり見出そうとする傾向がある】ということ。

著者は因果関係の錯誤のパターンをこれでもかと挙げてくれます。代表的なのは原題でもある「ハロー効果」。優れた業績を挙げた企業は、あたかも後光(ハロー)が射しているかのごとく、その業績につながり得る全ての要因(企業文化・リーダーシップ・組織などなど)が過大評価されがちになります。業績の悪い企業ではその逆のことが起こります。

これは人間の一般的な傾向なので、成功(失敗)企業を取り上げるビジネス誌の記者も、成功(失敗)企業としてインタビューに答える経営者や社員も、すべてハロー効果の影響を受けています。したがって、それらの記事やインタビューを基に書かれたケーススタディや研究やビジネス書も、ハロー効果の影響を受けています。つまり、まず結果を見て、それに合うような解釈をしがちだということです。

このハロー効果を含めて、合計9つの「妄想」を取り上げています。以下にまとめてみました。

  1. 業績という結果から原因を後付けする【ハロー(後光)効果】
  2. 相関関係を因果関係と思い込んでいる
  3. 業績には複数の原因があり得るのに、特定の原因を強調する
  4. 結果として成功した企業だけを、不成功企業との比較なしに分析する
  5. 徹底的な調査を強調するが、資料にハロー効果のあるものが多い
  6. 永続的な成功を約束する
  7. 業績を競争環境と切り離し、絶対的なものとして扱う
  8. 成功した企業の戦略を一般化してしまう
  9. 物理法則のような確実な法則を探す

ビジネス書にありがちな9つの過ち*ListFreak

因果関係の錯誤を指摘した本は何冊か読んだことがありますが、この本はかなり徹底しています。自分の主張を強めるために他の著書のメッセージをすこし狭く解釈している印象を受けた箇所もあったものの、おおむね頷きながら読めました。特に、ベストセラーは(分析の正確さはともかく)ストーリーとして良くできているという指摘。たしかに「なるほどなるほど!」と感嘆しながらぐいぐい読んだ本は、それだけで満腹になってしまって、その論理を後からチェックしてみようとは、なかなか思わないものかもしれません。

※では、このような因果関係の錯誤から脱するにはどうすればよいのか。本書はビジネス書の読み解き方に関する本であって、残念ながらそのあたりは詳しく書かれていません。

引用:

 

因果関係をより正確に説明したいなら、複数回にわたって異なる時期にデータを収集すれば、一つの変数がその後の結果にあたえた影響をもっと明確に分離できる。これは縦断的手法と呼ばれ、実行するには時間と経費がもっと必要だが、単純な相関関係から誤った結論を導いてしまうおそれは小さくなる。(p125。太字部分は原文では傍点)

たしかに。ただしその場合には観測する変数をあらかじめ決めておくか、時期をずらしたデータから解釈を導かなければなりません。

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