- タイトル:決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント (ウォートン経営戦略シリーズ)
- 著者:マイケル・A・ロベルト(著)、スカイライトコンサルティング(翻訳)
- 出版社:英治出版
- 出版日:2006-07-24
ミニレビュー
私が本書で主張したいのは、リーダーは自分の意思決定の有効性を判断するのに結果を待つ必要はないということである。結果を待つのではなく、重大な選択をするために用いているプロセスを綿密に検討すべきなのだ。
なぜ、プロセスを綿密に検討することで意思決定の有効性が判断できるのか?『プロセスの質が高ければ、実行後の成果がプラスになる可能性も高い』からです。では質を高めるために、何が必要か?著者は、以下のように「対立」と「コンセンサス」のマネジメントであると主張します。
リーダーは批判的かつ発展的な思考のレベルを高めるために、建設的な意見の対立を助成すると同時に、決定事項を適切なタイミングで効果的に実行させるためのコンセンサスを築かなければならない。
本書の構成を以下に示しますが、実際に「対立」(Conflict)と「コンセンサス」(Consensus)のマネジメントにそれぞれ100ページ程度の紙面が割かれています。
Part1 意思決定プロセスを導く
Part2 意見の対立を促す
Part3 コンセンサスを形成する
Part4 新たなリーダーの条件
駄目押しをするならば、原著の副題も”Managing For Conflict And Consensus”です。
いかに健全な対立を誘発し、建設的に解決するか。Part2では、例えばこんな落とし穴の存在に気づかせてくれます。
1. 反対する人を飼いならしてしまう
2. ハブ・アンド・スポーク型で(リーダーとメンバーが1:Nで向き合う形で)対話してしまう
3. 質問・反対の時間をなくしてしまう
4. 閉じこもりと両極化を促してしまう
5. 見せかけの精度を追求してしまう
コンセンサスについて、この本では以下のように述べています。
コンセンサスというのは全員一致という意味でも、まして多数意見ということでもない。意思決定を行うのがリーダーではなく、チームだという意味でもない。複数の選択肢の要点を取り入れた妥協的解決策を見つけなければならないということでもない。
「コンセンサスを得る」という言葉を、なんとなく「大多数の人が妥協できる解決策を見つける」くらいにしか定義していなかったので、この部分にはハッとさせられました。
ではコンセンサスとは何か。著者の(少々長い)定義を引用します。
コンセンサスというのは、参加者が最終決定を理解し、採択された行動方針の遂行に全力を尽くすことを誓い、その計画が全員のものであるとの意識を持ち、その実行活動において進んで他の人たちと協力しようという意思を持つことである。
本書が目指す高い理想に向かって歩むために、事例やチェックリストなど実践のためのヒントも豊富に備わっています。良書の多いこのシリーズの中でも、個人的にはかなり上位に来る本でした。