ミニレビュー
文章読本・作文術の類は、著者の文章が好きになれるかどうか。
これで半分以上評価が決まってしまう気がします。
文章で文章術を説くのですからこれは宿命みたいなもので、
「この著者みたいな文章が書きたい!」と思えればこそ、
学びにも身が入ろうというもの。
この本は、その点で非常に高評価です。わたしにとって。
著者は朝日新聞で10年以上「天声人語」を担当された編集者とのこと。その時期がわたしの中学〜大学時代あたりに重なっています。文体に馴染みがあるのはそのせいかな。
大きく「素材の発見」「文章の基本」「表現の工夫」の三章に分けて、それぞれに5つの心構えを用意しています。特徴的な章立てなので引いておきます:
<広場無欲感>の巻―素材の発見
広い円―書くための準備は
現場―見て、見て、見る
無心―先入観の恐ろしさ
意欲―胸からあふれるものを
感覚―感じたことの表現法
<平均遊具品>の巻―文章の基本
平明―わかりやすさの秘密、読む人の側に立つ
均衡―文章の後ろ姿、社会の後ろ姿
遊び―異質なものとの出あい
身体性―細部へのこだわりを
品格―ものごとを見つめるゆとり
<整正新選流>の巻―表現の工夫
整える―気をつけたい六つのこと
正確―終着駅のない旅
新鮮―避けたい紋切型の表現
選ぶ―余計なものをそぎおとす
流れ―書き出しから結びまで
よい(お気に入りの)文章読本の例に漏れず、豊富な引用があります。その引用がまた話題にぴたりと沿った、いい文章ばかり。読みものとしても楽しい本でした。