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箱―Getting Out Of The Box

  • タイトル:箱―Getting Out Of The Box
  • 著者:ジ・アービンガー・インスティチュート(著)、The Arbinger Institute(著)、冨永 星(著)
  • 出版社:文春ネスコ
  • 出版日:2001-10-01

ミニレビュー

Thinking Out Of The Box(枠の外で考える)という言葉が好きなので、その類の発想法の本だと思って読み始めたら、まったく違う本でした。

この本の「箱」とは、「自己欺瞞」(self-deception)のこと。

例えばあなたの赤ん坊が夜中に泣き出したとします。
下のような気持ちが1秒くらいの間に駆け巡りませんか:

反射的に「あ、起きてオムツを替えなくちゃ」と思う
→しかし次の瞬間、「何でオレが…」「明日朝早いのに…」と思う
→そして次の瞬間、「ヨメの方が時間に余裕があるはずだ」「狸寝入りしやがって…」と思う

これは本の導入部で登場人物が挙げる例ですが、わたしが数年前(子供が小さかった頃)に頻繁に感じた感情そのまま(笑)。

どうしてこう感じるか。そのきっかけは一番最初に感じた感情(あ、起きてオムツを替えなくちゃ…)に背いてしまうところ。そうすると、

自分の感情に背いたことを(意識的にせよ無意識にせよ)認めたくない
→自分を正当化しなくてはならない
→自分が正しくあるためには相手が間違っていてくれていなければならない

こんな感じで、自分を守るために相手を見る目をゆがめてしまいます。この本ではこういう状態を「箱」に入っていると呼びます。

主人公は、ザグラムという企業に転職してきた上級管理職のトム。物語を通じて、人間がいかに「箱」から出るのが難しいか、出るにはどうすればよいか、箱の外に留まることでどんなメリットがあるのかがこれでもかと書いてあります。

平易な語り口ではありますが、その意味するところはなかなか厳しい面を含んでいます。上司や仲間に恵まれない(と感じている)人は、実は自分にも原因があってそうなっている可能性が高いことに気づかされるからです。