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はだしの聖者―満州の二宮尊徳といわれた山崎寿の物語


ミニレビュー

これほど廉潔無私な人がいたとは信じられない。読後、ほんとうにノンフィクションなのかと疑ってしまいました。

時は1930年前後。主人公の山崎 寿は一燈園(Wikipedia)の創始者、西田天香(Wikipedia)の教えに帰依し、彼に命じられるままに満州に赴きました。徹底した奉仕の精神で現地の人たちすら放棄した土地を耕し、やがて人心を集め、「燈影荘」という農園を拓いていきます。ここのくだりはとても痛快。
しかし1945年の1月になって徴兵され、ソ連で敗戦を迎えました。終戦後シベリアに送られ、過酷な強制労働を生き延びて帰国したものの健康を害し、1948年に46歳の若さで亡くなっています。シベリアにあっても山崎氏の精神は変わらず、現地の医師から先生と尊敬されるといったエピソードが紹介されていました。フィクションならば、ここまで過酷な筋書きは書けないでしょう。そういう人生が現実にあって、しかも立派に生き抜いた方がおられた。すごい本でした。