ミニレビュー
ヴィパッサナー瞑想 → マインドフルネス → ACT → 森田療法 という道のりで、この本を見つけました。精神療法の創始者の本ということから、またタイトルから、精神分析の本かと見当をつけていましたが、手に取ってみると予想とはまったく違い、予想外に平易で面白い本でした。
こういうのは随想集というのでしょうね、多少まとまった随筆のような文章から数行単位の随想までが集められています。著者は森田正馬氏(1874 – 1938)ですが、水谷啓二氏によって表現が現代語に改められていて、おかげで読みやすくなっています。
たとえば次はもっとも短い随想の一つ。箴言とでもいうべき深みがありますね。
『毛虫は当然いやらしい
毛虫がいやらしいと思うのは感情であり、それが人に飛びつくものでないことを知るのは理知である。毛虫をいやらしく思わないようにしようと工夫するのは悪知であり、いやらしいままに必要に応じてそれを除去する工夫をするのは良知である。』
そして驚くほど話題が広い。目次を引用します。
はじめに
? 生活と向上のための人間学
1 心理から見た人間の種々相
2 自分を伸ばす生き方の研究
3 朝寝のなおし方と能率向上の秘訣
4 金、物、時間、労力の活用法
5 生活の調和と改善について
6 子供の心理としつけ方
7 上手に表現するには? 人の心を正しく理解する
1 神経症になやむ人びとのために
2 医者と患者の注意すべきこと
3 学問をする人のために
4 精神病患者のいろいろ
5 催眠術の原理と暗示の作用
6 迷信におちいらないために
7 私の生い立ちを中心に森田先生に救われた私の体験(水谷啓二)
精神病からライフハック、そして文章術までという感じで、さまざまなトピックについて著者の考えに触れることができます。
水谷氏による「森田先生に救われた私の体験」も、著者の人となりが活写されている貴重な文章と見受けました。