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モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか


ミニレビュー

「はじめに」から引用します。

『本書のテーマは、モチベーションである。モチベーションについて信じられていることの大半が、とてもではないが真実とは言えない。(略)あまりにも長い間、科学者たちの得た知識とビジネスの現場で行われていることの間には、不一致があった。本書の目的は、この隔たりを埋めることだ。』

ということで、外発的動機づけ(いわゆるアメとムチ)だけに頼らず内発的動機づけに注目せよというメッセージを、「モチベーション3.0」にアップグレードせよという比喩を用いて解説しているのが本書。ちなみにモチベーション1.0は文明以前というか、生存欲のレベルです。

著者ダニエル・ピンクがまとめた、〈モチベーション3.0〉を生み出す根源的な欲求は次のとおり。

  • 【自律性(Autonomy) 】 自分の人生を自ら導きたいという欲求
  • 【熟達(Mastery)】 自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動
  • 【目的(Purpose)】 自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思い

〈モチベーション3.0〉3つの要素*ListFreak

これと、この基になったエドワード・デシらの理論とを比べてみましょう。

  • 自律性への欲求(the need for autonomy) ― 自分自身の選択で行動していると感じたい
  • 有能さへの欲求(the need for competence) ― 環境と効果的にかかわり、有能感を感じたい
  • 関係性への欲求(the need for relatedness) ― 他者とつながりをもち、かかわりあっていきたい

自発性(内発的動機づけ)のみなもと*ListFreak

最初の項目はかなり似ています。2番目の項目もほぼ同じですが、この部分ではデシの内発的動機づけ理論にチクセントミハイのフロー理論や、熟達のプロセスに関する研究から得られた知見を加えてまとめています。

3番目は、やや異なっています。ピンクは「目的の追求は人間の本質である」(目次)と書いています。デシの枠組みでは、目的意識を持つといったことはおそらく「自律性」に含め、さらに本質的な動機づけの要因を探ろうとしているように思えます。デシの『人を伸ばす力』から引用します。
『われわれの視点の中核にあるのは、人は主体的に周囲の世界に参加していく中で、生命としての統合プロセスを経て発達するのだという主張である。』

本家の「内発的動機づけ理論」は、人間の発達と成長の過程における動機づけといった視点を持っています。一方〈モチベーション3.0〉はビジネスパーソン、つまり成人を念頭に置いて作られています。第3項目の違いは、そのあたりから来るのかなという印象を受けました。

といっても、両者は重なるシーンが多いように思います。「自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい」という動機を感じるとき、そこには他者(家族や組織や社会)との関係性が含まれてくるからです。

ピンクがこのテーマで行った講演の動画はこちら。文章上手なだけでなく、話し上手でもあることが分かります。
Dan Pink on the surprising science of motivation” | Video on TED.com

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