ミニレビュー
■コラム風「若返り生活の実践記録」
テーマは、いわゆる抗加齢。想定読者は、一線からの引退(65歳)プラスマイナス5年くらいの方だと思います。タイトルだけでは、(今のところ)まず手に取らない類の本ですが、親しい友人に勧められて読んでみました。
そうしたら、何と面白いことか。一冊両親に贈ってしまいました。
70歳の元弁護士クリスと、彼のホームドクターであるハリーとの共著。リレーコラム風に章を書き継いでいきます。トピックは運動・食事・感情・セックスに至るまで生活全般にわたりますが、とりわけ運動に2/3くらいのボリュームが割かれています。
基本的にはクリスが、自分が理解した進化生物学的な観点からの運動の必要性や、運動への挑戦、その気持ちよさや効果などを語ります。そこへ合いの手を入れるように、ドクター・ハリーが医学的な根拠を添えていきます。
運動メニューが載っているわけではありません(簡単な組み立て方は紹介されています)。グラフも表も一切なし。この本の魅力は、なんといってもクリスが「若返り生活」を楽しんでいる様子を軽妙につづっている、その語り口にあると思います。ちょっと長いですが、感じが分かる部分をつまみ食い的に引用します。
私は近くのジムに行き、けっこうな金額を払って年間会員になり、スピニングのスケジュール表を手に入れた。朝の六時半からだ。正直言って、最初はすごく恥ずかしかった。年寄りだし、標準体重を二〇キロは上回っていたし、もちろんウェアは似合わない。かすかにヨーロッパなまりのあるドキッとするほど美人のインストラクターが、どうしようもないわね、という表情を浮かべてやってきて、それでも親切にやり方を教えてくれた。
(略)確かにスピニングはきつかった。しかし、私のような気まぐれな人間がやる気になれた。きついけれど、おもしろい。こいつはチャレンジだ。だから私は次の日も行った。その後も毎日通った。もう何年も続けているが、今でも十分に刺激的だ。
(略)ハリーと私の意見は一致している。最初は、ゆっくり始めよう。(略)何週間か続けて、これなら楽だと感じるようになったら、次からは少し「きつい」と感じるペースでやる。そうすれば効果を実感できる。
(p105)
■年上向けの本を読む効用
わたし自身は想定読者層よりも若いですが、自分より年上の方向けの本を読むというのは、いろいろ勉強になりますね(第20章のタイトルは、「セックスは(たぶん)不滅だ」。そうなのか!?)。特にこの本は、老いに立ち向かう(そして成功を収めている)先輩の話です。読んでいて気分が明るくなりますね。