ミニレビュー
書評 究極の鍛錬
プロゴルファーのタイガー・ウッズなど卓越した業績を上げる人や、いわゆる「達人」と呼ばれる人たちが、なぜその領域にいるのかを研究した本。最初に、卓越した業績の要因にならないものが特定されます。
・経験(経験が長ければ自動的に業績が上がるわけではない)
・才能(生まれつきの能力と業績には相関関係が見つかっていない)
・知能(知能と業績には相関関係が見つかっていない)
「才能」と業績の相関関係を示す研究がない、というのはちょっと意外でした。著者は生まれつきの能力に差がないと言っているわけではありません。そういった能力と「卓越した」業績のあいだの相関関係がないということです。
では「達人」はどうやって達人になるのか。端的に言えば
『達人と素人の違いは特定の専門分野で一生上達するために、考え抜いた努力をどれだけ行ったのかの違いなのである。』
ということだそうです。
まず「特定の専門分野で一生上達する」と決められるほど、分野を絞ることが必要。達人の超人的に思えるような知覚能力や記憶能力は、専門分野の莫大な知識と訓練によってのみ強化されるからです。
次に「考え抜いた努力」をすることも重要。ただの努力じゃダメなんですね。達人は(必要に応じて専門家の助けを借りて)自分の課題を解決するための特別な練習を考案するとのこと。書籍のタイトル「究極の鍛錬」の原語は”deliberate practice”で、直訳すれば「考え抜かれた鍛錬」です。
そして「どれだけ行ったのか」、つまり量が重要。才能も知能も大きな要因ではないという知見から、まあ必然的にそうなりますね。
「究極の鍛錬」の特徴をまとめなおしたのが次のリスト。
- 実績向上のために特別に考案されている
- 何度も繰り返すことができる
- 結果へのフィードバックが継続的にある
- 精神的にはとてもつらい(集中と努力が必要なので)
- あまりおもしろくない(不得手なことに取り組むので)
「究極の鍛錬」の特徴 – *ListFreak
では何が人に「とてもつらい」「おもしろくない」鍛錬を続けさせるのか。本書の最終章「情熱はどこからやってくるのか」は、達人に究極の鍛錬を続けさせる動機の源泉について書かれています。残念ながらこの部分はまだ研究途上のようで、要するに内的動機づけが重要というメッセージにとどまっていますが。
人間歳を取ると頭の働きも体の動きもゆっくりになりますが、「究極の鍛錬」を生涯続ける達人の能力は、衰えないとのこと。個人的には「とてもつらい」「おもしろくない」と宣言されると、なにか挑戦を受けたようでモチベーションが上がります。当サイトに書き続けているコラムやミニ書評がが「ただの努力」でなくて「考え抜かれた鍛錬」になるように再定義してみたいと思います。