カテゴリー
資料

ブッダが考えたこと―これが最初の仏教だ


ミニレビュー

意志決定や問題解決の方法論の起源をさかのぼって行き着いたいくつかの源流のひとつが仏教でした。そしてどうやら最初期の思想、つまりブッダ本人が考えたことがいちばん論理的にすっきりしていて、後になるほど分かりづらくなってくる。ブッダは哲学を語ったのに、それが宗教として広まった、そんな印象を持ちました。
ブッダの考えたことが宗教として広まる過程で、救済の効果(どんないいことがあるか)、救済の対象(どんな人が救われるか)、救済の過程(どうすれば救われるか)みたいなところが分かれていって、宗派が生まれたのでしょう。
慈悲の教えを説く宗教ですから、対立はなく、林立にはおおらかで、いつしか乱立してしまった……みたいなことかしら、と思っていました。本書の「はじめに」では、そんな事情が解説されています。

引用:

かくして、「正しい仏教」がいくつも並び立ち、仏教とはいったい何なのかと考えて仏教学者が書いたものを読みあさる人々は、ますます仏教が何であるかがわからなくなる、という事態になる(略)。
(略)
 本書で追究するのは、「最初の仏教」は何であったかということである。しかし(略)わたくしが「最初の仏教」に深い関心を抱くのは、信の立場からではなく、哲学、倫理学の立場からであり、その意味で「最初の仏教」が驚くべき完成度をもっていることに瞳目させられているからである。(略)したがって、わたくしは、「最初の仏教」こそが「正しい仏教」だと主張するつもりは毛頭ない。(はじめに)

著者は文献から類推し得る「ブッダが考えたこと」を思想史のなかに置き、ブッダが何を説いたか、それがいかに傑出した哲学・倫理学であったかを明らかにしようとしています。周辺知識もなく宗教としての仏教にもあまり興味のないわたしのような読者にとって、「ブッダが考えたこと」の大枠をつかむにはちょうどよい本だと思います。

ただ、論が自著の主張と合わない思想や個人への批判に及ぶところでは筆が主観的・感情的に流れてしまいます。淡々と主張と根拠を語っていただいたほうが説得力が高まったかも。

リスト (from *ListFreak)