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スローライフのために「しないこと」


ミニレビュー

「スロー」の草分け、辻 信一さんによる、アンチToDoリスト論。「する」ことを詰め込むワーク(&ライフ)スタイルから、することを減らして「いる」ことを楽しむスタイルへの転換を提案します。

全体としては、共感しました。たとえば『よくよく見れば、「すること」リストの中には、忘れかけた「したいこと」たちが、どこか下のほうに埋もれているかもしれない。それらを取り出してみるのもいい。』という部分は、わたし自身「UnDoneリスト」と称して大事にしていることでもあります(参考:「夢を見捨てないToDoリスト術」 – 『リストのチカラ』オンライン版)。

著者の「しないこと」リストに「比べないこと」があれば、もっと共感できたなあと感じました。たとえば上で引用した文と同じページにある文章。

引用:

 また、若いうちから自分の死について考えておくのも、いいことだとぼくは思っている。誰だって、死に向かって生きているのだ。そしてそのことと向き合うことなしに、自分が生きていることの意味を、今していることの意味を、そして「すること」リストの意味を、十分に理解することはできないだろうから。ま、時間管理人なら、「死について想う時間」なんて真っ先にゴミ箱にドラッグするでしょうけど。

余生の長さを感じたうえで、いまここで「すること」に向き合う。とてもよいメッセージだと思うのですが、最後の一文の意図や効果については疑問を抱きます。すこし後の方にはこんな文も。
「トイレの時間にさえ、時間管理や生産性の論理を持ち込まずにいられない効率の専門家たちの姿が哀れに見えるのはぼくだけ?」。
著作を引用したうえで(必然的に特定の著者を名指して)「哀れに見える」と斬ってみせるあたり、なかなか好戦的なトーンなのでちょっとびっくりしました。そのように他者と自分のスタイルを比べてアピールしなくても、ご自分の信じる価値をストレートに提案して、読者の判断に委ねるだけで十分伝わるように思います。著者が何回か引用している加島祥造さんの文章は、まさに「比べない」姿勢で、わたしはそちらのほうが好きだなあ。と、わたしも比べてみたりして。

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