ミニレビュー
□ 智恵の授け方
成功のための十の智恵を授けましょうといって箇条書きにしたものを見せられても、十中八九「ふーん」で終わってしまうと思います。ある言葉が座右の銘となるのは、その短い言葉の裏に自分なりのストーリーがあるからに他なりません。その部分を共有しない他人が、たとえば「ずいぶん一面的な言葉を座右の銘にしているな」と思ったとしても仕方のないことです。それと同じことです。
著者は新約聖書の世界を舞台に100ページの童話を作ります。圧倒的な人間性を持つ主人公(ザアカイという徴税人)の話が先にあって、その彼が晩年皆に問われるままに自らの人生訓を「九つの知恵」として書き留めるという構成になっています。
「成功の智恵」というと何となくいろんなものの寄せ集め的に思ってしまいがちです。でもこのような工夫によって「ザアカイという一人の人格者の信条」として読まされると、なるほどザアカイ的に生きるというのはこういうことなのね、という感じで著者のメッセージがよく理解できる気がしました。
しかも、「奇跡」が起きて、第十の智恵が明らかになるオマケつき。この最後の智恵だけ引用してみましょうか。
他の何者かではなく、
自分自身であるために努力しなさい。
ね、「ふーん」以上のものではないでしょう 。ですから他の九つの智恵も引用しないでおきます。