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フラット化する世界

  • タイトル:フラット化する世界(上)
  • 著者:トーマス・フリードマン(著)、伏見 威蕃(翻訳)
  • 出版社:日本経済新聞社
  • 出版日:2006-05-25

ミニレビュー

「フラット化する世界」の意味するところを、なんとなく分かっているような気になっていて、半年以上放置していました。後悔。

特に本サイトのテーマである「個人の選択」に注目すると、やはり第6章「無敵の民」を挙げておかねばなりません。無敵の民とは、著者トーマス・フリードマン氏の定義によれば「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」(p12)。「新ミドルクラスに必要な人材」(p17)という項から、見出しを引用しつつまとめてみます。

・偉大な共同作業者・まとめ役 ― グローバルなチームをまとめる管理職
・偉大な合成役(シンセサイザー) ― 異質のものを統合し価値を産み出す役
・偉大な説明役 ― 複雑なものを分かりやすく説明する役
・偉大な梃子入れ役 ― 全体を見渡し、効率を高める役
・偉大な適応者(アダプター) ― 状況の変化に適応してスキルを磨いていける「なんでも屋」(Versatilist)
・グリーン・ピープル ― 21世紀の巨大産業「環境」に関わる職
・熱心なパーソナライザー ― サービスにパーソナルな味付けの出来る人
・偉大なローカライザー ― グローバルなインフラをローカル化する役

■ジャーナリストの価値

本の中身以外で印象的だったのは、ジャーナリストという職業の価値です。
世界中を取材して回る行動力、取材の結果をフレームワークにまとめる構想力。そして分かりやすい文章に落とす筆力。「世界のスナップショット」を(文章で)撮ってくれ、さらに未来をも考えさせてくれる本になっています。世界中の人がbloggerになろうとも、こういう仕事をしてくれる人は必要だと思った次第。

学者のように理論を立てる代わりに、すごい勢いで事例を並べていきます。巻末近く、フラット化の負の影響を避けるために何をすべきかというくだりで引用される言葉は、彼自身のアプローチをも弁護しているかのようです。
「一つの好事例は一〇〇〇の理論に匹敵する」