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なぜ新規事業は成功しないのか―「仮説のマネジメント」の理論と実践


ミニレビュー

□ 誰がいつ読む本なのか
本の帯にはこう書いてあります。
『もう計画倒れで終わらせない ― アイデアの評価法から人選、戦略立案、支援・管理体制づくりまで、新規事業の成功ノウハウを満載!』
これを読んで、視点が他人事だなと感じました。新規事業を興す側でなく、経営企画あたりの部署の方が勉強のために読むことを想定されているのかなと。

まえがきの方には『本書が、新規事業に果敢に取り組む経営トップ、社内起業家、新規事業チーム、経営企画部門、新規事業担当部門の方々に少しでもお役に立ち…』とあります。言ってみれば、ベンチャーとVCの両方に役立ちたい本だということですが、これは少し欲張りな話。帯の通り社内起業家でなく社内VC的な立場の方々向けではないかと思います。

内容は大変に網羅的で、特に仮説―検証のプロセスを構造化していこうとして提唱されている「仮説のマネジメント」はいい言葉だなと思いました。
アイデアを事業コンセプトとして表現する方法、事業コンセプトを開発プロジェクトとして評価する方法、新規事業の戦略の立て方などなどは、まさに社内VCのお仕事であり、教科書的な価値の高い本です。

では社内起業家が読んでも得るものはないかというとそんなことはないのですが、社内VCとは読むタイミングが違うのです。
どうしてもやりたいことがある。できれば今の企業の新規事業としてやりたい。そのためにもっともらしい体裁を整えるためにはどうしたらいいんだろう。そんな問題意識をもったうえで読めばこの上なく有用な本でしょう。技術と市場から見た新規事業のポジショニング云々は後付けでいいんだと思います。

□ 志のマネジメントを
「なぜ新規事業は成功しないのか」というタイトルにまっすぐに応えるならば、「なぜあなたの企業は志ある起業家を輩出できないのか」について言及されていなければならないと考えます。ヒトさえいれば、事業コンセプトだ評価だといった話は、賢い経営企画部門の方が応援してくれるはず。
この本の終章に書いてあるような教育の話、その前に書いてあるような会社の仕組みの話が最初にあり、第1章から第6章あたりまでのハウツー的な部分は後回しにしたならば、ヒトの重要性を強調できたかもしれません。

なんにせよ、この本で語られている「仮説のマネジメントによる新規事業の管理」は、「志のマネジメントによる事業家の創出」あっての話であり、そこがしっかり伝わらねば、ハコモノ行政よろしく管理部門と制度ばかりが充実してしまいかねません。

最後に、こういう本は自らアツくあって欲しいと思います。「!」を連発しろという意味ではなく、読者を励まし、挑発する存在であって欲しいと思います。

(注)左は1998年に出版されたバージョンです。新版で大幅に加筆・修正されているそうなので、古本屋で探すときはご注意あれ。