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目に見えない資本主義

  • タイトル:目に見えない資本主義
  • 著者:田坂 広志(たさか ひろし)(著)
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 出版日:2009-07-24

ミニレビュー

『人間の精神の「成熟」とは、「見えない価値」が見えるようになること。』
(わたしにとって)本書を象徴する一文を挙げるとすると、これです。

われわれの多くが感じている行き詰まり感のようなものと、そこからの展望(予見できる未来)を、『資本主義の「経済原理」に起こる五つのパラダイム転換』としてまとめています。

(1)「操作主義経済」から「複雑系経済」へ
(2)「知識経済」から「共感経済」へ
(3)「貨幣経済」から「自発経済」へ
(4)「享受型経済」から「参加型経済」へ
(5)「無限成長経済」から「地球環境経済」へ
(目次から引用)

ピンと来る言葉と来ない言葉とがあるかもしれませんが、一読すればその意味は明らかになります。

本書は、これらのパラダイム転換を概観しつつ、終盤では日本社会が目指すべき方向性についての提言を行っています。その提言を支えているのが、冒頭で引用した一文だと思うのです。

かつて日本人は、「目に見えない価値」を重んじるという意味で「成熟」していた。いま、世界の人々が価値を認めるものが、貨幣という「目に見える価値」から「目に見えない価値」へと広がっている。その現状を考えれば、日本人の役割は、(昔からの価値観を弁証法的に発展させたうえで)国としての「成熟」を実現することではないか。そういった主張が熱く語られています。

近年の著作のエッセンス集といった印象を受けました。田坂さんの著作を読まれている方にとっては、これまでの主張が統合された本書によって個々の著書の理解が深まると思います。著者の本を初めて手に取られた方にとっては、著者の社会観に触れることができます。興味に応じて過去の著作をひもといていくガイドになります。

(著者から献本いただきました。ありがとうございます)

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