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あたりまえのアダムス

  • タイトル:あたりまえのアダムス
  • 著者:ロバート・アップデグラフ(著)、酒井 泰介(翻訳)
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 出版日:2003-11-29

ミニレビュー

『あたりまえのアダムス』は1916年に発表された50ページ弱の短い物語です。これに、アイデアや計画が「あたりまえ」かを見分ける5つのテストと「あたりまえ」のことを発見する5つの方法という短い解説を加えたものが本書です。

学歴も人脈も専門知識も無いアダムスは、雑誌や新聞の切り抜きといった仕事から身を起こし、有名な広告代理店の副社長として活躍するまでになりました。その彼の武器が「あたりまえ」なのです。

副社長になっても平々凡々としているアダムスの痛快なエピソードは本をお読みいただくとして、彼の貫いている「あたりまえ」主義は転職を考えている方にも役立つと感じました。

我々はしばしば、環境を変えることで自分を変えよう、伸ばそうとします。もしあなたが転職をお考えなら、新しい人間関係で刺激を受けたい、新しい仕事で自分を伸ばしたい、などなどの理由をお持ちと思います。

しかし、転職によって変わるのは「環境」だけであり、それに伴って自動的に自分が変わったり伸びたりするわけではありません。これはそれこそ「あたりまえ」のことですが(笑)、つい混同してしまいがちです。

常にあたりまえに考えるアダムスは、環境が自分を変えてくれると期待するのではなく、自分から環境に働きかけています。

そもそも彼が広告の世界に興味を持ったのは、夜学の講義でオズワルドという社長の話を聞いたことがきっかけでした。その翌日には、直接面会を求めてオズワルド氏の会社を訪問しています。

うまく面会できたか、オズワルド氏に雇われたかという結果は、ここでは関係ありません(ちなみに、面会はできましたがその場では採用されませんでした)。しかし通読すると、オズワルド氏の下で働くと決心したからまず本人にそのことを伝えようと試みる、その「あたりまえ」主義を貫いたことが彼を成功に導いてきたことが分かります。

これはなかなか難しいことです。例えば「会社から正当な評価をされていない」という方に「上司と話し合いましたか」と聞いてみると、実際に自分が納得いくまで行動している「あたりまえ」な人よりも、「どうせ聞く耳持ってませんから」といって諦めてしまっている人のほうが多い。

本当にそうなのかもしれません。しかしどの企業で何をしようとも、環境も自分も刻々と変わっていくものです。自分で考えて環境を作ろうと試みることなく転職してしまったら、きっと次の職場でも似たような不満を持たれることになるのではないでしょうか。

(この例では自分を正当に評価してもらおうという)「あたりまえ」の姿勢を持ち続けることが、配置転換なのか転職なのかは分かりませんが、結果的に自分を活かす・伸ばす環境で働くことにつながる道なのではないかと思います。

(初出:@IT自分戦略研究所「転職を考えたとき」に読んでほしい6冊