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クリエイティブ・クラスの世紀


ミニレビュー

引用:

 クリエイティブな才能の獲得競争は世界中でヒートアップしている。約一億五〇〇〇万人、つまり世界の人口の約二・五パーセントは母国以外に住んでいる。三〇〇〇万人の外国出身の住民がいるアメリカは、その五人のうちの一人を集めている。しかし移民人口の比率では、すでにカナダ(一八パーセント)やオーストラリア(二二パーセント)がアメリカを上回っている。経済優位を維持するためには、製品、サービス面や資本面で競うよりも、才能ある人々を惹きつけ、留まらせることが必要であるということに、多くの国々が気づき始めている。(p11、太字は引用者による)

2002年に読んで衝撃を受けた”The Rise of the Creative Class”の続編(著者の著作としては続々編)です。日本ではこの本が先に出て、”The Rise of…”のほうは『クリエイティブ資本論』というタイトルで後から翻訳されました。

本書は9.11テロ事件のを経てますます内向きになった米国に警告を鳴らしつつ、”The Rise of…”のロジックを世界に押し広げようとしています。著者の切り口でいえば、日本はクリエイティブたる要素をあまり持っておらず、この本の中でもほとんど出番がありません。にもかかわらず、総合的なクリエイティビティ指数ではなんとスウェーデンについて世界第二位!を獲得しています。そのあたりの違和感から、前作のような「なるほど!」感を持って読むことができませんでした。

全体に、移民の獲得をクリエイティビティを高めるための重要なポイントと見なし(過ぎ)ているように感じます。例えば国民の教育など国のクリエイティビティを高めるために他にできそうなことがいろいろあると思うのですが、そういったことについては意外なほど論じられていません。