ミニレビュー
この本は「接続詞」だけについて書かれています。
冒頭、井伏鱒二のエッセイが引用されています。井伏が、尊敬する作家の原稿を見たところ、語尾と接続詞が徹底的に推敲されていて感銘を受けたという内容。このつかみはいいですね。
著者は文章論が専門の大学教員。文法用語にとらわれず、語と語、文と文をつなぐ機能を持った言葉を接続詞ととらえて独自に整理し、その分類に従って解説していきます。
接続詞の用い方に関して悩みがちなところが逐一押さえられていますし、接続詞の使い分け方が例文と共に紹介されているので分かりやすい。たとえば、連発してしまいがちな「しかし」をどうさばくか。著者は、「しかし」と置き換え可能な「だが」の機能を説明した上で、両者を使い分けている文例を示します。
引用:
「しかし」は先行文脈と後続文脈の食い違いを強調する接続詞で、文章の展開を積極的に切り替える意味合いをもっています。それにたいして、「だが」は先行文脈の延長線上に後続文脈が来ないことを示す接続詞で、それまでの文脈で示さなかった事実や書き手の意見を「じつは」という感じで差しだす意味合いを持っています。
著者も地の文の中で積極的に接続詞を使って生きたお手本を見せてくれています。なんだかんだ言ってもわれわれは大量の日本語を読んでいるので、まったく「知らなかった!」というような内容は少ないかもしれません。それでも、われわれが無意識に行っている接続詞の使い分け方が的確に言語化されているので、意識して接続詞を選ぼうとするときに大いに力になってくれそうです。