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さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学


ミニレビュー

会計の入門書といえば、飽和市場の典型のような気がしていました。アイデア次第でミリオンセラーを売るだけの余地はどの分野にでもあるのだ、ということを示してくれた本ですね。
(『会計的人間は「ケチ」』というくだりがありますが、わたしも会計的人間なので、費用対効果を鑑みて図書館で予約しておいて読みました 。)

利益の出し方、連結経営(強みを生かした横展開)、在庫と資金繰り、機会損失と決算書、回転率、キャッシュフローといった、企業会計における重要な概念を、身近なエピソードから分かりやすく解説してくれます。机の上に置いておいたら、嫁さんが1時間ちょっとでサクッと読み切って「面白かった!」と言っていました。この分かりやすさが支持を受けた理由でしょう。評判に違わぬ良い本でした。

ちょっと違和感を感じたのが、「身近な疑問 → 会計のツボ解説」という流れに混じり、ときどき「身近な疑問 → 会計のツボ解説 → 人生訓」みたいなところにまで踏み込んでしまうところ。「身近な疑問からはじめる会計学」を学びたいと思って読んでいたので、なくてもいいオマケかなという印象でした。
たとえば「早上がりで満足する雀荘の店員 → 商売では回転率が大事!」という章。ここまでは「なるほどなるほど」と読んでいけます。しかし著者はそこから『100人と薄っぺらい関係を築くのではなく、100人の人脈を持つひとりの人物と深くしっかりとした関係を築くべきなのだ』という訓を垂れます。前段との論理的なつながりが少し弱いせいもありますが、こういった話はしっかりとした文脈の中に置かないと、それこそ薄っぺらい処世術(失礼)を読まされたように感じてしまいますので、もったいない。