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なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学


ミニレビュー

文化人類学のアプローチをショッピングに持ち込んだ初めての会社(もちろん著者の弁ですが)の創業者による、楽しい読み物です。

文化人類学のアプローチとは要するにフィールドワーク重視、現場発想ということです。著者の経営するEnvirosell社は、客の流れをビデオで解析するのではなく、「トラッカー」(追跡者)と呼ばれる専門家が、客を尾行して視線の流れまで追いながら詳細な記録を取って、そこから店舗作りのアドバイスを引き出します。

何しろ実例が多くて面白い。ほんの少し棚を移動させただけで、商品の設置場所を入れ替えただけで、売上が劇的に伸びるような事例ばかりなので、読んでいて痛快です。

著者の「ショッピング」に対する愛着の強さもまた、この本を支える魅力のように思います。

引用:

人間が何かを買う必要があるときだけ店に入るのだとしたら、そして店では必要なものしか買わないのだとしたら、経済は破綻するだろう。

ショッピングを単なる「補充行動」でなく、楽しい経験・エンタテインメントだと考えていることがよく分かる一文です。

誰もが経験している買い物の話ですし、読みやすい文章でハードカバー / 350ページという厚さも気になりませんでした。マーケティングと関係ない方にもお勧めできます。

Envirosell社のホームページ

# インターネット上のショッピングについては全19章のうちの1章だけを割いて慎重な記述をするに留めていますが、基本的な考え方は同じです。ソフトウェアでも、初めて使うユーザーがどこをどのようにいじるか、ビデオにとったり背中から覗いたりしますよね。マウスが、目線が、画面のどこをどのようにさまよったかが分かれば、使い勝手へのフィードバックは大なるものがあるでしょう。あー、弊社もがんばろう