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エモーショナル・ブレイン―情動の脳科学

  • タイトル:エモーショナル・ブレイン―情動の脳科学
  • 著者:ジョセフ ルドゥー(著)、LeDoux,Joseph(原著)、元, 松本(翻訳)、邦彦, 小幡(翻訳)、茂樹, 湯浅(翻訳)、光毅, 川村(翻訳)、典生, 石塚(翻訳)
  • 出版社:東京大学出版会
  • 出版日:2003-04-01

ミニレビュー

情動についての脳神経科学的な研究はどのように進んできたのかを俯瞰できる一冊。原著の出版は1996年、本書の訳出は2003年ですので、20世紀の進展を俯瞰できる一冊という感じでしょうか。

本書のスタンスについて、著者はこう述べています。
『私は情動を神経系の生物学的機能と見る。脳内においてどのように情動が表現されているのかを明らかにすることが、情動を理解することになると信じている。このアプローチは、情動の脳内メカニズムを考慮せずに、単に心理的状態として捉えてきた従来の代表的な研究とは対極にある。』
情動、さらにひろく「心」の問題については、心理学や哲学と融合させた独自理論を打ち出す人もいますが、著者のスタンスはあくまで上記の視点で一貫しています。したがって「脳科学」と名の付く本にしばしば見られがちな「学説と私見のごたまぜを読まされている感」ありません。章ごとに付けられた注や参考文献のリストなども完備しており、必要に応じて根拠となる情報にあたれるのもいいですね。

この本がよく知られている理由の一つは、「低位の道/高位の道」の発見ではないでしょうか。情動刺激が扁桃体に伝わって情動反応を生み出すまでに、実は並行した2つの回路があるという話です。1つは感覚視床から扁桃体に直行するルートで、ラットでは約12ミリ秒しかかからないそうです。これが低位の道。もう1つは、感覚視床から感覚皮質を経由して扁桃体にいたる高位の道で、これは約2倍の時間がかかるとのこと。