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大人のための文章教室


ミニレビュー

カルチャーセンター的文章論

清水義範氏の文章教室。「文章読本」ではなく「文章教室」である、と強調しています。その理由は、あくまでも一般の大人向けに書いたから。これまでの「文章読本」は古今の名文の研究書になっていて、文章の書き方の指南書ではなくなってしまっている。そこで私が……という次第。「文章読本」につきものの、名文の(長い)引用をよして、例文はすべて著者が書いています。

接続詞・文の長さ・句読点といった、文章術の本が避けて通れない内容から
手紙・実用文・紀行文・随筆といった、文章のタイプ別の「裏技表技」の指南まで。世の「文章読本」が大学の講義だとすれば、こちらのねらいはカルチャーセンターでしょうか(実際にカルチャーセンターの講義を聴いたことがないので、イメージに過ぎませんが……)。講師の名調子を聞く感じで読み進めていける新書です。

著者の経験に基づいて、文章の書き方を分かりやすく

なるほど、と思ったところをつまみ食い。

文章の長さについて。重要なことは短く書く。

引用:

 

 決断や、最終決定や、実際の行動などは、短い文で力強く訴えるのがよい。そして、なぜそうなったのかの理由や、そうなった経緯などは、長い文で説明する。そこにリズムが生まれる。(「長短とテンマル」)

手紙の書き方について。『ごく普通に、心をこめ、かつ礼にかなった手紙を書けばいいのだ』。著者がある講演依頼を断ったときの、まるまる2ページにもなる詫び状を全文引用し、こう続けます。

引用:

 

 これは依頼を断る手紙だから、ここまで丁寧に正直に書くのである。なるべく相手の心に届くように、ということだけが、私が手紙を書くときに心がけていることだ。(「手紙の書き方の裏技表技」)

文章の上達法について。一度長いものを書き上げてみる。著者が高校生の時に原稿用紙250枚の長編に挑戦したときのことを思い出していわく、

引用:

 

 つまり、ここから導き出される上達法は、一度長いものを書ききってみると、文章力がかなり身につく、ということだ。
(略)
 ただし、そこで重要なのは最後まで書ききるということだ。書きあげて、「完」とか「了」と記した時に、ひとつ上の地平に達しているんだと思う。五十枚とか七十枚とか書いて、やっぱり中断しちゃった、というのでは手に入るものはそうないのだ。(「文章上達のあの手この手」)

ここは個人的に共感。わたしも最近長〜い文章を、それこそ本一冊分を、書く経験をしました。「ひとつ上の地平」が見えたとは思わないものの、書く前と比べれば文章の生産性は上がったように思います。

ちょっとツッコミたくなるところも、カルチャーセンター的?

一方で、ところどころ「それは先生の個人的な見解では……」と、ちょっとツッコミたくなるところもあります。その辺の愛嬌(といっては僭越ですが)も、またどことなくカルチャーセンターっぽい。

ひとつ例を挙げれば、「ワープロで作成する文章は、ぶっきらぼうになりがち」なので、「心をこめたい文章は手書きにすべし」という主張。

引用:

 

 原稿の依頼文書で、「締切り、○月○日必着」なんてあるのは、ワープロのせいでそうなっているのかなあと思う。手で書いたなら、「締切りは、急で申し訳ありませんが○月○とさせていただきます。」とするのじゃないだろうか。(「打つか、書くか」)

ワープロ草創期ならともかく、この本は2004年10月刊。ワープロでは漢字が多めになる、ワープロは活字が出てくるのでクールになるといった観察はなされていますが、せっかくですから「打つ」と「書く」との違いが文章の作り方とできあがった文章そのものに与える影響についての考察も読みたかったところです。