ミニレビュー
第一章のタイトルが「明快で知的な文章への誘い」。誘われますねえ。著者は、人間の理解と表現の法則を五つに整理したうえで、明快で知的な文章を書くための十の方策を提案しています。
まずは五つの法則を目次から引用します。目次にここまで詳しく書いてある本は珍しい。
- 人は、その場の状況の認識や、あらかじめ持っている知識・経験によって、送られてくる言葉の意味が何であるかについて予測したときは、その予測に沿って受け取った言葉を理解する。
- その場の状況についての認識が同じであったり、知識。経験を共有したりしている送り手と受け手との間では、表現が不完全であっても理解が正しく通じる場合がある。
- 表現がわかりにくかったりあいまいであったりするほど、また、送り手と受け手との間の知識・経験の異なりが大きいほど、誤解が生じたり理解が不可能になったりする。
- 書き手がよく知っていること、書き手にとって自明であることほど、書き手は内容を簡単にまとめたり、言葉を省略して書く傾向がある。
- 文章の書き手が、脳中にあることを、残りなく正確に表現することに意識を集中して書くと、修飾語を多く持つ長い文を書いてしまう。
文章の理解と表現に関する5つの法則 – *ListFreak
十の方策は少々長いので引用は割愛します。Amazonの「なか見!検索」に対応しているので、ご興味のある方は覗いてみてください。目次が丁寧に作られているので、立ち読みに向いています(立ち読みで十分という意味ではなくて、目次で内容を判断しやすい良心的な本という意味ですよ)。
十の方策は四つに分類されています。すなわち「わかりやすさを増すための方策」「知的な文章を書くための方策」「発想を豊かにするための方策」「構想を立てるための方策」。いわゆる文章術としてはオーソドックスな内容ですが、平易に具体的に書かれているので、類書を読まれた方であっても復習になりそうです。
そんな中で、十個目の方策はユニークと感じました。上で述べた「構想を立てるための方策」に分類される唯一の方策です。
引用:
方策10 アウトラインを抽出して利用する
文章の構想を立てる、つまり、どんなことを、どんな順序で述べるかを計画するためには、既存の、よい文章の骨組み(アウトライン)を目的、効果別に分けて抽出しておく。文章を書くときには、文章の目的、効果に応じて、抽出しておいた骨組みを参照して、どんな材料を集めるか、どんな組み立てで書くかを決める。
よい文章の骨組みをリスト化してコレクションしておけば、(なかなか骨が折れそうですが)たしかに役立ちそうです。巻末には代表的な文章の骨組みがいくつか掲載されています。