ミニレビュー
ほぼ100年前に、日本の魂の何たるかを英語で説明しきったこの本を書いたとき、新渡戸稲造は38歳。
本書が執筆された動機は「宗教を持たない日本人がどうして倫理観や道徳観を持ち得ようか」という西洋人からの問に答えることだったとのこと。日本に生まれ育ち海外に渡り、自らはクェーカー教徒としての信仰生活を送る著者にして初めて書けた日本論なのかもしれません。
訳文は格調高くリズム良い名調子。しかしやはりところどころ難解なので、この岩波文庫版を底本にした李登輝氏の『「武士道」解題―ノーブレス・オブリージュとは』が理解を助けてくれます。李登輝氏も22の年まで日本人として生活を送り、その後国外に出た方。両者に共通しているのはやはり「日本的なるもの」をアジアないし世界の中で相対化して解説できる国際経験です。
武士道という道徳体系が義・仁といったキーワードごとにまとめられています。それぞれ論理的に繋がっているように思えるのですが、全貌がなかなか捉えられませんので、時間を見つけて図解に挑戦してみたいですね。
ちなみに原本(英語)は著作権が切れており、ネット上で公開されています。
> Bushido The Soul Of Japan