- タイトル:はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
- 著者:ミヒャエル・エンデ(著)、上田 真而子(翻訳)、佐藤 真理子(翻訳)、Michael Ende(原著)
- 出版社:岩波書店
- 出版日:1982-06-07
ミニレビュー
年末年始にしか読めそうもない本を一冊、と思い、児童書の棚から手に取りました。実際には岩波少年文庫(上・下巻)を読んだのですが、こちらの本の装丁のほうが原作者エンデのリクエストに叶ったものだということなので、こちらを挙げておきます。
■あらすじ
主人公のバスチアン少年が読む本の題名も『はてしない物語』。<虚無>に覆われつつあるファンタジーエン国を救うことができる救世主を探しに出かけたアトレーユ少年の冒険譚を夢中で読んでいるうちに、ファンタジーエン国というのは人間の想像力が作り出す物語の世界であり、救世主は他ならぬ自分だと気づいてしまう…という、とても凝った構成になっています。
後半はファンタジーエン国に入り込んだバスチアンが、自らの「真(まこと)の意志」とは何かを探し当て、実世界に戻ってくるまでを描いていますが、これが何とも…深い。
■「意志」についての物語
ファンタジーエン国の女王から託される「アウリン」というメダルが重要な役割を担っています。
前半、アトレーユが持っていたときには、それはまさに「意志」の象徴でした。
あのおしるしを身につけていた間、一度として何をなすべきかに迷わなかったということだ。おしるしは、神秘な羅針盤のように、かれの意志、かれの決断を正しい方向へと導いてくれていた。
こんなメダルが欲しいものですね。というか、「自分ナビ」というのはそのような存在になりたいと思っているわけですが。
後半、バスチアンがアウリンを持つことになったとき、そこに
『汝の 欲する ことを なせ』
と書かれているのに気がつきます。そしてそれは
「したいことをなんでもしていい」ことではなく、
「真の意志を持つ」ことである
という説明を受けます。難しい説明ではありませんか。
実世界からやってきたバスチアンは、その想像力を駆使すれば、物語の国ファンタジーエン国で「したいことをなんでもしていい」状況にあります。まずはカッコよくなって、強くなって、勇気を持って…というように、分かりやすい望みをどんどん叶えていくのですが、そういった望みは自分の「真の意志」足りえないことを、苦い経験とともに知ることになります。
「自分ナビ」作成プログラムの中の「自由期間クイズ」のようなエクササイズは、ちょっとこれに似ていますね。
かなり長いですが、よくできた物語の常で、乗ってくれば一気に読みきれます。
想像力を持って未来を描き、意志を持って前に進む。元気が出ること請け合いです。