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コンセプトノート

142. Think Bigというスキル(2) ― チャレンジの4ステップ「TESS」

チャレンジの4ステップ「TESS」

前回、チャレンジの心構えとして

“Think Big, Evaluate Quick, Start Small, Scale Fast”
「大きく考え、素早く絞り込み、小さく始める。いけそうだったらどん
どん広げる」

がよさそうだと書きました。覚えやすいようにTESSと名前を付けておき
ます。

大きく考えていく(T)中で100の道が見えてきたとしても、実際に試せる(S1)の
はそのうちの10であり、広げられる(S2)のは1。”Evaluate”というステップは、
暗黙のうちにThink BigとStart Smallの間に存在するわけですが、これを明示
した方がよいと考えた理由がいくつかあります。サンプルとして、
「移住してみたいところを考える」
というエクササイズをやりつつ、考えてみましょう。
まずは移住してみたいところを考えてみてください。

安心してThink Bigしやすくなる
典型的には、「適度に田舎で適度に都会で…○○かなあ」というように実際の
地名から候補を選ばれる方が多いと思います。
なぜか。おそらく、「次のStart Smallステップは、情報収集してみたり実際に
旅行してみるんだろうな」ということが見通せてしまっているから、ではない
でしょうか。
現実味を考えるステップを明示的に切り出すことによって、安心して発想を広
げられます。

「自然の豊かなところに住むが、魔法のトンネルで東京にも行ける」
「自然の豊かなところに理想の街を作る」
「こういう場所に島をこしらえる」

単なる遊びのようですが、本当の優先順位は無意識に置いている制約を外さな
いと見えてこないものですよね。
魔法のトンネルを作ったのであれば、具体的にそこをくぐるシーンを想像しま
しょう。買い物、飲み会、夜中にコンビニに…発想を広げていくうちに
「都会に住むが、魔法のトンネルで自然の豊かなところにも行ける」
という位が自分のスタイルに合っていることを発見するかもしれません。

実際に重要なステップである
大きく考えて出てきた100のアイデア。必ずしも、そこから10を「選ぶ」という
発想でいく必要はありません。100のアイデアを組み合わせて、80を満たせる新
しい10の打ち手を「創り出す」ことだって可能なはずです。
アイデアを評価し、打ち手に変換するという”Evaluate Quick”ステップを意識
することで、打ち手とその目的がはっきりしてきます。

独立したスキルである
上記のように考えてくると、”Think Big, Start Small”のカンマの部分には
・適切なフレームワークで評価する
・推定する
・計画する
といった作業があることが分かってきます。
そしてこれらはある種のスキルとして学ぶことができるものです。

もちろん、そういったことに時間を掛け過ぎないためにStart Small、「まずは
試してみよう!」と言っているわけです。あまり細分化するのはこのスローガ
ンの精神に反します。実際、文字通り「案ずるより産むが易し」なケースもあ
るでしょう。それを忘れないために Evaluate に “Quick” を添えました。

ビジネスプラン作りとTESSとの類似性

さて、1ステップ加えてそれらしくなったTESSを眺めてみると、
ビジネスでも同じような枠組みでチャレンジに取り組んでいることに
気づきます。TESSと対比させて書くならば

1.市場機会の発見
2.実現可能性の評価(市場、競合、自社の強みなどに照らして)
3.パイロット(試験的な実行)
4.スケールアップ

こんな感じでしょう。ビジネスの領域では様々な方法論やツールが開発されて
いることを考えれば、個人のチャレンジを支援する方法論は未成熟と感じます。

これは、何回も述べていますが、根本的には「存在理由」の明確さに起因する
と考えています。
非営利であれ営利であれ組織は目的を持って誕生し、成長していく。だからチ
ャレンジの成否が分かりやすい。
個人はただ生まれてきてそこにあるわけで、成功・失敗を簡単には論じられな
い。仮に何らかの物差しを作ったとして、それに照らして失敗だったから個人
の人生(の一部)が失敗だったというのではつまらなすぎる。

逆に言えば、その違いに気をつけていけば、個人がチャレンジを楽しむための
方法論やツールも、ビジネスからの知見を導入して更に充実させていけそうで
す。