“Ready For Anything”(なんでも来い)の境地
渡邉美樹氏(ワタミ社長)と村上龍氏(作家)の対談番組で、
村上さんが、「現在の悩みは何ですか?」と問いました。
渡邉さんは、しばし考え、「ない」と答えられました。
十数社の社長をやっている身だから、心配事は当然たくさんある。
しかし、それをひとつひとつ潰していくのが自分の仕事。
(どうしていいか途方に暮れてしまうという意味での)悩みは、ない。
そういうお答えでした。
『ストレスフリーの仕事術』では、頭の中にある「やりたいこと」「やるべきこと」を徹底的にリストアップし、メンテナンスしていくことで”Ready For Anything”、つまり「なんでも来い」という状態を作り出すことを提案しています。渡邉さんの言葉は、まさに”Ready For Anything”でした。
「なんでも来いの境地」の先にあるもの
「なんでも来いの境地」は、新しい何かを創造するための必要条件である。
著者(デビッド・アレン氏)の主張をまとめると、こう言えると思います。
「なんでも来いの境地」のために必要なのは「整理」。アレン氏の”Getting Things Done”(GTD)という方法論が、まず目の前の仕事をさくさくと片付けるところにフォーカスを当てるのは、ここに理由があります。創造のために整理が必要だということについて、印象的なたとえ話がありました。
考えてみよう。絵描きはつねに筆と絵の具をきれいに整理している。キャンバスに向かってから「さあ、絵の具を整えるぞ」などとは考えてはいない。(p119)
「なんでも来いの境地」を目指す目的は、降ってくるタスクをただ早くさばくだけでなく、積極的な行動の自由度を高めるところにあります。チャレンジが仕掛けやすくなるということです。
武道家が構える姿勢は、受身でもなく、攻めでもなく、決まった形のものでもない。力強く、生き生きと、創造的で変幻自在なものだ。しかし、まったく型がないというわけではない。ある原則に沿いつつも、訓練に訓練を重ねた経験によって身につくものなのだ。仕事に対する「構え」も同様だ。(p26)
一言で言えば、「臨機応変」ということになるでしょう。
「臨機応変」が「朝令暮改」にならないためには、自分なりの原則を意識する必要があります。しかし、まず原則を打ち立てて、それから行動を律しようと考えると、なかなか実践が難しい。原則先行のアプローチにしばしば感じる息苦しさがないところが、GTDが支持を得ている理由の一つではないでしょうか。