カテゴリー
コンセプトノート

041. 無いと困るもの

先日のイントロセミナーで、株式会社ジェイブレインの修行社長が「無いと困るもの?」をキーワードに面白いスピーチを組み立てられていました。

ジェイブレインは営業系のコンサルテーションと若手経営者層にフォーカスした人材紹介業とを事業の柱に据えています。昨今はなかなかモノが売れない。いくら良いものを作っても、いくら安いものを作っても売れない。
そんな時に営業戦略を立てるひとつの切り口として、「その商品は無いと困るものか?」ということを考えるそうです。あったらすごく便利というレベルではダメで、「無いと困る」ものでなければならない。

人材も同じ。「あなたは今の会社に無くてはならない存在か?」と自問して「いなくても何とかなるかな」と思えるのなら、それはよろしくない。

じゃあどうすればいいのか。営業の話に戻ると、「無いと困る」商品でなかったら捨てるしかないのかというと、そういうことにはならないのですね。その商品のポジションを把握した上で、「無いと困る」シナリオをどう作るか。誰にいつどうやってアピールすれば「無いと困る」と感じていただけるのか。そのストーリーを営業マンと一緒になって描いていくのです。

ふたたび、人材も同じ。キャリア戦略も企業経営と同じで、市場・競合・自分の分析をしながら「自分でないと」というポジションをどう作っていくか。そんなお話でした。

その翌日、河合文化教育研究所の相京さんという方をたずねました。ここは予備校の河合塾の研究所で、「エンリッチ講座」のような刺激的な、一見するととても予備校らしくない試みをされています。予備校を含めた高校教育の現状のインタビューに行きまして、いろいろな洞察をうかがってきたのでいずれ起-動線に還元していきたいと思います。
それはさておき、奇しくも、そこでも「無いと困る」シナリオ作りという話になりました。推薦で大学が決まってしまった高校生に自分ナビみたいなプログラムはどうですかねえなどと乱暴な思い付きを話していたときのことです。

例えば医学部に合格した学生への追加コースは何か、というお題における相京さんの答えはちょっと意外ですが、生物の授業だそうです。

理系で優秀な方は物理・化学の成績がよくて、いいところが狙えそうだというので医学部を受けて受かってしまうケースがある。でも、いざ大学に入って扱うことになるナマモノの知識に乏しかったりする。そこで、どうせ大学に入ってキャッチアップが必要となる、つまり「無いと困る」生物の学習の機会を提案する、というシナリオでした。なるほど、これは未来のニーズを今見せているわけです。

どのケースも、決して不要なものを押し売りするための方便作りではありません。需要の創造、潜在的なニーズをしっかり探り当てた上で、それを「無いと困る」シナリオとして見せることで価値を主張するのです。

みたび、人材も同じ。自分のやりたいことが社会のどんなニーズに訴えるのかを丹念にマッチングさせ、やりたいことの周りに需要を造り上げていっている人が、つねに「自分でないと困る」ポジションを取っている人ということになります。