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コンセプトノート

542. 測りづらいものを測る

見える化のお手本

トーマス・ダベンポート教授(米バブソン大学)は、著書『真実を見抜く分析力』で、データも存在せず客観的に測るのも難しいと思われる情報をうまく変数化して、分析のためのモデルを作った事例をいくつか挙げています。その一つとして印象的だったのがED(勃起障害)です。

EDは『自己申告による病気で、客観的な診断テストがないため、医師も正確に診断しにくい』。たしかに。そこで『R.C.ローゼンのチームは、勃起障害の治療による効果を検出できる、簡潔で信頼に足る、患者本人が行える計測手法を開発した』とのこと。

簡潔で、信頼に足る、しかも自己診断できる手法。EDでなくても気になります(よね)。『ローゼンたちは、勃起障害を診断するための重要な変数』として次の5つを選びました。

  • 勃起できる自信
  • 勃起の硬さ
  • 勃起を維持できる頻度
  • 勃起を維持できる能力
  • 満足感

IIEF-5(国際的に採用されている勃起機能に関する5つの評価項目)*ListFreak

ふむ。なんというか、プロセスと結果、客観的に見積もれそうな機能的な値とごく主観的な心情的な値、そんな要素がうまくミックスされているような気がします。この各項目を5段階のリッカート尺度で評価するための設問を作り、それぞれの回答を足し合わせると、5から25のスコアが出ます。それを「重症」から「障害なし」までの5段階に分けます。ご興味のある方は上記のリストのリンクをたどっていただくか、”IIEF-5″で検索していただければ。

著者はIIEF-5を『主観的なトピックに関するデータをどうやって集めたらいいかの良い事例』と称しています。経営分析でも「見える化」が大事といいますが、顧客の満足や従業員の働きがいなど、主観が強く反映される情報を定量分析に持ち込むうえで参考にできそうです。

意思決定の良さを測る変数とは

このアプローチを意志決定に活かすとどうなるでしょうか。定量分析ですので、転職や企業といった一回性の強い選択よりは、ランチや服の選択といった日常的に繰り返す意思決定を想定するのがふさわしいでしょう。

決定の質を評価する変数を特定するのが一仕事ですが、まずはたたき台として次のようなものを考えてみました:

  • (プロセス)十分に選択肢を挙げたか?
  • (プロセス)基準を持って選択肢を絞り込んだか?
  • (結果)客観的にみて妥当な選択だったか?
  • (結果)主観的に満足できる選択だったか?

日常的な選択、たとえば○千円以上の出費について、こういった基準で5段階評価を行い、データを積み上げてみると、決定の質を改善するヒントがつかめるかもしれません。すこし試してみたいと思います。