検査には、満たすべき基準がある
民間の遺伝子検査ビジネスを解説した記事(1)のなかに「ACCEモデル」という枠組みを見つけました。アメリカの疾病管理センター (CDC) が考案した、遺伝子検査の正当性を測る基準のようです。記事とCDCのサイトからまとめた、その枠組みは次のようなものでした。
- 【分析的妥当性】 何回やっても、どの機関で行っても同じ結果が出るなど、検査として確立されているか (analytic validity)
- 【臨床的妥当性】 ある検査の結果と病気との関連性が確立しているか (clinical validity)
- 【臨床的有用性】 病気の診断がついた患者に治療などの対処法はあるか (clinical utility)
- 【倫理的法的社会的影響】 差別につながらないか・プライバシーは守られているか等々 (ethical, legal and social implications)
正当な遺伝子検査が満たすべき基準 (ACCE) – *ListFreak
妥当性と有用性というコンビは、要するに「それはまともか?」「それは役に立つか?」といっていいでしょう。様々なもののチェックに幅広く使えると感じました。
少し調べてみると、検査や監査に関連する記事で「妥当性」(adequacy, validity)と「有用(効)性」(effectiveness, utility)のペアが多く登場します。さらに、その前段に「適合性」(suitability, conformity) が加わってトリオを形成している記事も多く見かけました。斜め読みですが、適合性とは「(そもそも)測るものと測られるものが合っているか?」といった意味だと理解しました(2)。対象としていないものを検査(監査)しても意味がないので、そのチェックが最初にあるということでしょうか。
有用で、妥当で、○○
ちょうど来週実施する新しいトレーニングコンテンツをつくっているところだったので、これを受講生がどう感じるか、有効性と妥当性の枠組みで想像してみました。
まずは有用性。まずは先述の「適合性」をクリアしていることが有用性を感じる前提になります。つまり「このトレーニングは、自分の問題意識や目的に応えてくれそうだ」と思ってもらなわなければなりません。そのうえで「このトレーニングで身につけるスキルは(もしまともなものならば)役に立ちそうだ」と思ってもらうことが必要です。
この(もしまともなものならば)に応えるのが妥当性です。期待される効果が得られそうだと論理的に(つまり演繹的に)、あるいは事例などで帰納的に、納得できなければ、取り組む意欲を持ってもらえないでしょう。
わたしの好きな目的と手段というペアと結びつけるならば、有用性とは「目的にかなった効果が得られるか?」という問いであり、妥当性は「その目的を果たす手段として妥当か?」という問いです。
そういう意味では骨太ですが、最低限の条件をおさえただけとも言えます。さらにいろいろなシーンを想像すると、これらを基本としてもう一要素を加えることで、文脈に即した枠組みが作れそうです。
たとえば上述のように受講生に説明するのであれば、「有用」で「妥当」で、さらに「手軽」だと言えれば、のってきてくれそうです。一方で人事部に提案する場合には、「有用」で「妥当」で、さらに「割安」だと言えたほうがよいでしょう。
(1) 「遺伝子検査」実は占い並み!?過熱ビジネスに注意せよ (ダイヤモンド・オンライン)
(2) “Suitability, Adequacy, and Effectiveness” (Whittington & Associates)