心理的恐喝(ブラックメール)
心理的恐喝(ブラックメール)とは、『身近な人物が、直接的・間接的に、自分の思い通りにさせてくれなければあなたを罰すると脅すことで、わたしたちの心を操ろうとするときに使う、強力な手段のことである』。
セラピストのスーザン・フォワードは、心理的恐喝をそのように定義したうえで、恐喝者が突いてくるポイントを3つ挙げています。
- 恐怖心 (Fear)
- 義務感 (Obligation)
- 罪悪感 (Guilt)
心理的恐喝の3つの武器(FOG) – *ListFreak
著者は恐喝される側をブラックメールの「受信者」と呼び、一貫して受信者の味方として本書を書いています。しかし、送信者にならないように気をつけることも大事です。なぜなら、受信者がまた送信者にもなり得るからです。そう考える理由は2つあります。
1つめは、心理的恐喝は無意識的に行われ得るものであること。恐喝かどうかは、主に受信者の感じ方に依存します。受信者が、恐怖心・義務感・罪悪感をあおられて送信者の要求に屈したと感じたならば、送信者に悪意がなくても心理的恐喝が行われたことになります。
2つめは、コミュニケーションのやり方そのものが無意識的に再生産され得ること。人は、受信者として学習したコミュニケーションのやり方を、違う相手には発信者として利用します。子どもや部下が親や上司の論法を身につけてしまうように、コミュニケーションのスタイルは再生産されるのです。
心理的恐喝に対抗するSOS
本書の感想とは別に、使えそうなリストを見つけたので紹介します。心理的恐喝とまではいかなくても、交渉や商談など感情のマネジメントが必要なコミュニケーション全般において使えそうなステップだと思います。
- 【Stop(止まる)】すぐに反応しない。時間を稼ぐ。距離を置く。
- 【Observe(観察する)】状況を視覚化する。相手の要求、それに対する自分の思考と感情を観察する。
- 【Strategize(戦略を練る)】自己防衛的にならない、相手を味方に変える、取引をする、ユーモアを使う。
厳しい要求に対応するための”SOS” – *ListFreak
全部で3ステップしかないのに、その2/3が、いわば対応の準備に割かれています。これがとても実用的だと感じました。
Stopなど簡単なことのように思えます。しかし、相手に返答をせっつかれている状況下でStopをするのは容易ではありません。
このノートで繰り返し述べているように、とにかく「一拍置く」ことが、われわれに備わったEQを発揮する上でとても重要です。このくらいシンプルに一拍置く行動を徹底しておくと、実行しやすいのではないでしょうか。
せっかくですから、「EQ4つの感情能力」と合成して、SOSの3ステップのそれぞれで発揮すべき感情能力を考えてみます。
- 【Stop(止まる)】
- 【Observe(観察する)】
- 【気持ちを感じる】 自分や他者の気持ちを感じ取る
- 【気持ちを考える】 自分や他者の、気持ちの過去(なぜそういう気持ちになったか)と未来(これからどうなるか)を考える
- 【Strategize(戦略を練る)】
- 【気持ちを感じる】 言葉以外でも気持ちを表現する
- 【気持ちをつくる】 目的にふさわしい気持ちをつくる
- 【気持ちを考える】 気持ちを的確な言葉で表現する
- 【気持ちを活かす】 上の3つの能力を常に働かせ、考えに組み入れたうえで行動を選ぶ