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コンセプトノート

002. 意志決定支援を目的としたサイトに求められること

当会は、「自分ナビ」作成プログラムのユーザ(以下メンバー)の皆さんとともに、社会人の人生における「意志決定支援」を目的としたサイトを構築・運営していこうとしています。会員制でしかも主たる運営費用をメンバーからの出費に頼ろうという試みは、控えめに言っても冒険、人によっては無謀、「いわゆる」ネットビジネスに詳しい方からは問題外とのコメントを少なからず頂戴しました。しかしながら私たちがその目的を達成するためには、一般の情報サイト–典型的には無料で情報が閲覧できるサイト–と同じ収益モデルには頼れないと信じる理由があります。それを以下にまとめてみます。

【一般の情報サイトのビジネス】
一般の情報サイトは、例えていうとイベント等でプロモーション用に無料で配布される雑誌みたいなものです。ユーザは無料で情報を享受できますが、提供側(サイトの運営企業)はスポンサーから料金を徴収してビジネスとして運営しています。スポンサー企業のニーズに応えたい「優良」サイトは通常こんな手法を使って製品・サービスのアピールを支援しています:

  • バナー広告などで特定の情報を恣意的に「露出」する
  • 検索エンジンやナビゲーションに仕掛けを施し、特定の情報に恣意的に「誘導」する
  • 「編集長の推薦」「特集」「トップインタビュー」といった目立つ場所にちょうちん記事を掲載する

また雑誌では出来ないようなユーザ挙動の細かい追跡が可能ですから、それを統計処理してマーケティングデータとして販売しています。従って「優良」サイトであろうとすれば、多くのユーザに長い時間滞在してもらうべくサイト内のナビゲーションに工夫を凝らすことになります。圧倒的な(時には過剰なまでの)量のコンテンツ、高度な検索機能、寄り道を誘うサイト内リンクなど、多くのサイトの便利機能は100%私たちのためだけを考えてデザインされているわけでもありません。

更に複数のスポンサーから中立であろうとしますので、比較・検索機能はあっても100%ユーザーの立場に立ったサービス選びのサポート(例えば特定のサービスを明示的に推薦しない、など)は出来にくい構造になっています。

以上はいわばインターネットの常識です。無料で大量の情報が入手できるという利便性の高さこそが、(もしかしたらインターネットがオープンな技術標準の組み合わせで成立しているのと同じくらい)インターネットの商業利用を成功させてきた原因でしょうし、私たちも上記のような構造が決して悪いとは思っていません。スポンサー企業とサイト運営者とユーザは一種のWin-Win-Win関係にあり、サイトを利用する方の多くはこういった仕掛けをご存知の上で、あるところでは多少割り引きながら各種の情報を活用されていると思います。

【意志決定支援サイトに求められるもの】
ただし、「意志決定支援」を目的としたサイトでは、ユーザの意志決定を邪魔するような行為–上記の「恣意的な特定情報の露出」「恣意的な特定情報への誘導」など–は、当然ながら無いほうが良いわけです。またサイトに求められる要件は、情報量や検索機能よりも下記のようなことではないでしょうか:

  • 意志決定のフレームワークを提供してくれること
    –> 当会ではメンバーが「ライフ・アーキテクチャ」というフレームワークを共有
  • 意志決定時の判断基準を明確にする手伝いをしてくれること
    –> 当会では「自分ナビ」作成プログラムを通じて「ありたい自分」シートの作成による価値観ベースの判断基準の作成、シナリオビルディング手法による意志決定の支援
  • 意志決定後もコミットメントを持続できる支援をしてくれること
    –> 当会では「自分ナビ」作成プログラム卒業生向けの定期健診、また密度の高いコミュニティサービスを予定

さて企業というものは、どんなにお金を払っても消費者の「意志決定局面」に介入したいものです。しかし意志決定する側としては、そういう下心付きの支援は不要どころか有害かもしれません。

こう考えてくると、本当の意味で個人による個人のための中立サイトを運営するためには、まず互助会形式から始め「なければならない」のです。

※ 「自分ナビ」作成プログラムは提供を終了しています