問題解決のワークショップなどで最初に確認するのは、「問題」とは何か・どのように定義されるべきかということです。これは意外に奥の深いテーマで、問題の発見と定義というタイトルで1日のワークショップが組めてしまうほどですが、すくなくとも、何か望ましい状態と望ましくない現状との差が問題という定義からスタートしてよいでしょう。
地図でいえば「望ましい状態」(への通過地点)が目的地で、「望ましくない現状」が現在地です。両方にきちんとピンを立てられれば、問題はクリアになり、選択肢は自ずと地図の上に現れてくるはず。
ビジネスの問題の場合、現状はすでにわかっているはずですから、多くの時間を目的地の特定に費やします。
現状がよくわからない問題もあります。ほかならぬ自分に関わる問題です。作家の森 博嗣氏は、自由について考えるためには、まず自分がどのように自由でないのか、何に支配されているのかという状況分析が必要であると述べています。
道に迷ってしまう。そして地図を広げる。しかし、よくわからない。何がわからないのか。目的地ははっきりしている。
『自由をつくる自在に生きる』 (p110)
ところが、「今、自分がどこにいるのか」がわからないのである。「自分がどちらを向いているのか」もわからない。
自分の現在地がわからないという問題は、ビジネス上の問題解決にも影響を及ぼします。たとえば、会議が多すぎるという問題を訴えていた人がいるとします。望ましい状態も現状も、定量的に定義できます。したがって、客観的に妥当な解決策はわりと絞られてきます。しかしなぜか、そこからの行動が鈍い。効果の薄いところから手を付けようとしてみたり、解決策の実施を先延ばしにしたりする。真の問題は、妥当な解決策に踏み出せない当人の感情にひそんでいるといえそうです。すると作業は、問題の定義に戻ることになります。ただし一段深いレベルで。