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コンセプトノート

107. 人脈の広さと深さ、どちらが大事か

つながりの科学

  • 人と人とは意外に短い距離で「つながっている」こと
  • その過程には「人脈ハブ」とも呼ぶべき、人脈ポータルみたいな人が一枚噛んでいること

『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』や『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』といった本から、人と人とのつながりについて分かってきたことをまとめると、この2つになるかな、と思います。

前者はいわゆる「6次の隔たり」というやつ。

 後に有名になるミルグラムの実験は、1967年Psychology Today誌に「The Small World Problem」として発表された。ネブラスカ州オハマの住人の中から無作為に抽出した人に手紙を渡し、それぞれの知人へ手紙を転送しながら、マサチューセッツ州ボストン在住のある人へその手紙を届けるよう依頼したのである。この結果、届いた手紙は平均6人を経由して届いていることがわかった。
「信じたい心」を増幅するネットワーク

世界の誰とでも必ず6ホップでつながるわけではありません。
しかし、たいがいの人が感覚的に思っているよりは世界は小さい。

ちょっと計算してみると、ひとりあたり20人強の知り合いがいれば6ホップで日本全国をカバーできることになるから当然……かというとそうではない、というのが後者の「人脈ハブ」の話。

これは「ベキ法則」として解説されています。
「あ、アイツなら俺が昔一緒に仕事した奴の会社の先輩の親友だから紹介してやるよ」と言ってくれる人たちが、世界を小さくするために大きな貢献をしてくれているらしいですよ。

いま流行しているソーシャル・ネットワーキングの世界に入り込んでみると、こういったことがなんとなく分かりますね。

「弱い絆を活かす強い絆」仮説

少々大げさに言えば、いまやつながるだけなら誰とだってつながることはできると言ってもいいくらいでしょう。

さて「つながり」と「仕事」との関係を考えてみると、グラノヴェターの「弱い絆」が頭に浮びます。

アメリカの社会学者がいまから30年前に調査を行って有名になった概念です。紹介機関・親族・転職前の会社の仲間などから紹介を受けて転職した人よりも、職場の外の友人・知人からの紹介で転職した人の方が転職後の満足度も収入も良かったんだそうです。
夏休みは「人とのつながり」に投資しよう!

ということは、弱い絆でつながりまくっている現代においては、転職の心配が無くなった…?なにかおかしいですね。

ミルグラムの実験では、手紙が人種や階級の壁を越えて届く確率が低かったことが分かっています。「6」という数字が、終点まで届いた約3割の手紙の平均であり、7割の手紙は届かなかったことも見逃せません。

これが手紙の転送でなく、たとえば仕事のあっせん依頼だったらどうでしょう。
紹介する側にも責任が生じるようなことがらでは、ある「壁」が存在します。

 あの人だったら紹介できる。
 あの人を紹介できることを嬉しく思う。

最初の紹介者がそう思ってくれない限り、壁は越えられません。その壁を超えると、

 あの人の紹介だったら紹介できる。

というロジックで2次の紹介者が紹介をしてくれます。そして本人との距離が離れるほど紹介者の責任が軽くなるので、一気に情報が広まることになります。

つまり、弱い絆のネットワークを活かすためには、自分と直結している絆は強くなければならないというのがわたしの仮説です。

だからこそ、目の前の仕事を大事に

仮に人脈を広さと深さで表現できるとすると、
「幅を広げる」ことが容易になってきた現在、
問われているのはその「深さ」なのではないでしょうか。

『「いま」一緒に仕事をしている人たちの信頼を勝ち得ることに集中しよう』
『一つひとついい仕事を積み重ねていくことが、新しい仕事につながっていく 』

独りでビジネスを切り拓いてきた方に処世のコツを尋ねると、
多くの方がこのような言葉を口にされます。

それは、人のつながりを活かし・つながりに活かされてきた
プロフェッショナルたちが培ってきた、
深い智恵なのかもしれません。