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コンセプトノート

019. 人材開発は人生設計支援から

ある大手電子機器メーカーの研究員の方とお話する機会をいただきました。この方は能力開発など社員のコンピテンシー強化策について研究され、その成果を基に社員研修などの人材開発施策に関する企画をされています。

こちらの会社では社員個々人による主体的なキャリアデザインを支援されているそうです。そのためには先ず個人の価値観にまで遡った人生プランをグランドデザインし、仕事を通じて自己実現を果たすためのキャリアデザインを行う機会と手段を提供し、さらにキャリアデザインを具現化するための人事制度および能力開発・向上支援についての施策を一体で講じる必要があるとのこと。つまり人生全体における仕事の位置づけを明確にした上で、自社における仕事を通じた自己実現の機会を社員に提供しようというもので、仮に自社で働き続けることが社員の描くキャリアデザインに沿わないという判断がでればそれもやむなしという立場だそうです。逆に言うと、社員の仕事を通じた自己実現意欲に対応する職場環境や制度創りに対する自負の表れではないかと。

一見矛盾しがちな個人の立場と企業論理との整合性をとることによって企業力を高めようとする戦略。個人の価値観が多様化し労働市場の流動化が激しくなる今日、優秀な人材を育て強力な戦力として確保するための人材マネージメントの潮流を見る思いがしました。

キャリアプランについて考えることは無論大事なことですが、個人にとって仕事は社会生活全体を構成する一部であり、職業人としてのみならずその他の役(家庭人、友人、社会活動家など)として取り組む諸活動との相互影響を勘案しながらデザインすることによって後悔のない結果が得られるのだと思います。そのことに気づき、制度として確立しようとしているこの会社で働く社員はラッキーと言えるでしょう。しかし本来的にはパーソナルな問題ですから制度の有無にかかわらず自ら考えデザインする、そういう社会人でありたいと思うのです。人生設計、キャリアデザインというと1年365日思案し続けるには重たいテーマですが、自分にとっての節目の時期に思いっきり考える、ある一定の期間サイクルで考える癖をつけておく、そんな心がけが大切ではないでしょうか。