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コンセプトノート

405. ワークシート(Worksheet)とシンクシート(Thinksheet)

ワークシートの「書かされ感」

ある組織で、ある業務の定着化の支援をすることになりました。目標を立て、予定と実績を把握し……という仕事の流れを見直し、新しいやり方の定着を図るプロジェクトです。定着担当者の方が
「ワークシートを作って、埋めるだけで済むようにしています」
というシートを見せていただきました。なんとも詳細なシートで、埋めるのが楽しくなさそうです。率直にそう言ってみたところ、絶句されてしまいました。
「そんなこと言われても……。だって仕事じゃないですか!」

まあまあ、書いてもらってナンボですよね、というあたりから話し合い、結果として導入の仕方をすこし変える提案を差し上げました。定着担当者が考え尽くしたワークシートを渡して書き方を教えるのではなく、そもそもこの作業にワークシートは必要か?必要ならばそれに書くべき項目は何か?といったことを、実際にシートを使う作業者の皆さんにゼロから考えてもらいます。その後、定着担当者がシートの目的を説明しながら、シートの活用に必要だと考えている項目を提示し、取り込んでもらうという手順です。

このとき「ワークシート(Worksheet)」という言葉がわたしの心に引っかかりました。ワークシートは文字通り作業のためのシートで、最終成果物というよりは中間成果物です。ただデータを書き込むだけでなく、書き込みながら考えを整理できたり、深めていけるようなシートでなければ、活用が難しいでしょうし、書き込む方も楽しくないでしょう。

ワークシート(Worksheet)というよりシンクシート(Thinksheet)

もしシートの名前が、ワークシート(Worksheet)でなくシンクシート(Thinksheet)であったとしたら、どうだろう。何かを考えさせてくれるシートは、どのような形式なのか。そんなことを考えてみたくなりました。

まず一つめは、「問い」が並んだ形式のシート。シートに問われ、その答えを書き込んでいくようなかたちで考えていけるシートは、シンクシートです。ちなみに、前回の「調べる前に考えよ」というノートの中でご紹介した「汎用的な問題解決のサイクル」は、シンクシートの形式でも提供しています(ワークシートという名前ではありますが……「『問解決クイックガイド』」の最下部です)。

二つめは、文章を完成させる形式のシート。次に挙げるのは『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』で紹介されていた、創造性のエクササイズに少し手を入れたものです。□□に斬新な解釈を生み出したい対象を入れ、カッコ内を埋めていきます。

  • □□は、「     」に似ている。
  • なぜなら、「     」だからである。
  • したがって、「     」である。

斬新な解釈をつくり出す3文エクササイズ*ListFreak

さてここで、“Thinksheet”で検索してみました(本来はもっと粘ってThinkしなければならないところです……)。すると、”Think Sheet”と銘打たれたシートがいくつかあります。なんと、多くは悪いふるまいをした子供に自省させるためのシートです。そしてその多くは、文章を完成させる形式。一つ選んで訳してみます。

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名前:__________

わたしは、__________。
(↑たとえば「ルールを守らなかった」などのふるまいがリストアップされていて、マルをつけられるようになっています)

そして、__________。
(↑何が起きたかをくわしく)

わたしは、__________すべきでした。

そうすれば、__________。

だから、これからはわたしは__________。

サイン:__________

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Behavior Think Sheets – About.com)

……「書かされ感」満載のシートです。どうも、シンクシートだからといって書くのが楽しくなるというわけでもなさそうです。まあ、考えるのがイヤなことでも考えさせられる力を持っているととらえて、シンクシートの強力さを示す例として載せておきます。