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コンセプトノート

100. パートナーあっての選択

先日米国に行った折に、久しぶりに以前一緒に仕事をしたチームで集まる機会がありました。人の消息を聞くのは面白いものです。あれこれ聞いていくうちに(笑)、特に「夫婦」について考えるきっかけを貰いました。

充電中のA君

近しい同僚だったA君は大手ソフトウェア企業が出資したベンチャー企業に転職し、しばらくしてCEOにまでなりました。しかし残念ながら見込みほど成長せず2年前に会社を売却、その後大学院で学び直し、今年修了したそうです。

現在はパートタイムでできる仕事以外には仕事をしていない模様。友人と小さなITコンサルティング企業を立ち上げる計画もあるそうですが、「ほんとうにやりたいことかどうか分からない」ので考え中とのこと。そのような模索期間を持てる「余裕」がどこから来ているのかを、つい考えてしまいました。

まず経済的な余裕はどうか。彼の奥さん(一緒に来てくれていました)はバリバリのフルタイムワーカーなので、相棒に無職の期間があってもおカネの心配は(すくなくとも短期的には)なさそうです。

経済的にOKだからといってお金を稼がないことは、どの夫婦でも許されるわけではありませから、彼は2年以上にも及ぶ「模索」を応援(すくなくとも許容)してくれている奥さんから精神的な余裕も与えてもらっているということです。

その奥さんは実は妊娠6ヶ月。大きなお腹を抱えての登場でした。今度は旦那が支える番です。

専業主夫のB君

といっても、必ずしも仕事をするという選択しかないわけでもありません。その日は来られませんでしたがA君のチームメンバーでやはり転職したB君は、現在専業主夫をやっているそうです。B君は子供好きだし奥さんの稼ぎがいいらしいので、経済的にも精神的にも最適な選択のようでした。

NPOに転職したCさん

そして最後に、当時のチームメンバーと婚約したばかりのCさん。つい最近、全く畑違いの医療系のNPOに転職を決め、旦那はこの4年で2社目となるベンチャー企業で働いています。Cさんはとても優秀な人なので普通に転職活動をすれば10万ドルの年収は約束されていると思うのですが、現在の企業があまりにも激務だし、特別やりたいことでもないので婚約をきっかけにキャリアチェンジをしました。子供が大好きなCさんのこと、きっとたくさん子供をもうけるに違いありません。

パートナーあっての選択

A君、B君、Cさんそれぞれの選択はどれも、「パートナーが居なければしなかった(できなかった)であろう決断」です。パートナーの稼ぎが経済的なリスクヘッジになっているというのがひとつの原因ですが、それ以外に、選択の基準そのものの中心に「パートナーとの人生」、ひいては「家庭」があります。つまり「何のためにお金を稼ぎ、何のために使うのか」という問いへの答えとして、パートナーとの生活や育児があるということです。

ひとつの家計として、さらに子供を作って家庭としてやっていくことにはいろいろ制約もあります。実際、同棲非婚を選んでいる友人の中には、「敢えて結婚したり子供を作ったりするのはデメリットの方が大きい」と断言している人もいます。しかしこの日に出会った3人(3組)は、うまく希望やリスクをシェアしながら、ひとりでは選択できなかった道を歩んでいるように感じました。

特に印象に残ったのはA君の話。とても真っ直ぐな性格の彼は、ひとたびコミットするとすさまじい馬力で突進していくタイプなので、パパになったA君がどのような選択をしていくか、楽しみです。