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コンセプトノート

266. スピードを落とす勇気(2)

スピードを落とす勇気」を持つためにどうすればよいか。わたしもまだまだ研究中ですが、これまでに出会ったスピードダウンの達人やこれまでに考えてきたことから、幾つかのコツをまとめてみたいと思います。

小さなことから試してみる

 「ゆっくり走れば速くなる」メカニズムを信じるために、ちょっとした成功体験を作ることはできないでしょうか。

 多くの人が経験しているのは、ToDoリスト作りでしょう。ToDoリストそのものは成果ではありません。朝(あるいは前日の夜)にToDoリストを作るための時間を作ることは、たとえ10分であっても、最初はもったいないと感じるかもしれません(少なくともわたしはそうでした)。しかし一度作ってみれば、その時間が結果的に生産性の向上に寄与していることは明らかです。

「一時停止」をスケジュールに組み込む

 「仕事の山はいいが山脈はダメだ」。社会に出たての時期にマネジャーに教わった言葉です。
 一時的に忙しくなるのは避けがたいし、自己成長の機会でもある。しかしそれが山脈のように続いて終わりが見えないのは、仕事の管理ができていないことを意味する。そういう教えだと理解しました。

 その後ベンチャーに転じ、独立するに及んで、「山はいいが山脈はダメ」という言葉は、わたしにとって重くなるばかりです。
 仕事と生活の質を保つためには、適切な「空白」を確保することが欠かせません。スケジュール上の空白には、単に予定がない空白とそうでない空白との2種類があります。後者の空白は明確な「予定」であり、アポイントメントと同じように管理されるべきものです。

成果に貪欲になる

 スピードダウンは放棄でも脱落でも、逃避でもありません。
 心をオープンにして本来の目的を再定義する。その目的を果たすために最善の手段をゼロから考えてみる。そのような思考作業は意識的に行う(例えば部屋にこもって考え詰める)ことも、無意識の働きに期待する(例えば旅に出る)ことも、あると思います。いずれにせよ、スピードを落とすのは、より大きな成果のためなのです。

 アスリートがゆっくり走るのは、より速く走るためです。
 経営者がゆっくり決断するのは、より速く行動するためです。
 いま作ろうとしている空白は、ただの空白ではないのです。