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コンセプトノート

213. クリティカル・シンキングという態度

クリティカル・シンキングは、一般には「与えられた情報や知識を鵜呑みにせず、複数の視点から注意深く、論理的に分析する能力や態度」と定義される。
― 『クリティカル・シンキングと教育』 p4

クリティカル・シンキングと銘打たれた思考法は幾つかあり、わたしもその一派を教えたりしているわけですが、上記で注意深く「能力や態度」と定義されている通り、方法論以上に「考える態度」あるいは「構え」が重要であると思います。

最近読んだ記事に、筆者がどうやってクリティカル・シンキングを身につけたかを振り返っている文章がありました。やや意訳して紹介するとこんな感じです。

1. 何か新しいことを毎日学ぶ。どんな思考法であれ、それを身につける最良の道は実際にやってみることである。練習あるのみ。
2. 「自分がどのように考えているか」を考える。とりわけ、何か決断を下そうとしているときに考えてみる。その決断は、何か好ましくない影響を受けていないか?自分が知っていること、信じていること、分からないことについてどんな前提を置いているか?その前提を綿密に調べたか?
3. 変化を受け入れる。懐疑的すぎるくらい懐疑的に構え、すべてを最終決定前の試案と思うくらい、変化に対してオープンになる。
― “Critical Thinking and the Difference Between Knowledge and Propaganda” – How to Save the World

わたしも自分なりの定義を試みたくなりました。

第一に必要なのは、「自分で考える」態度。クリティカル・「シンキング」というくらいだから当然ですね。他人が言うことはもちろんですが、自分の知識や成功体験までも脇に置き、ゼロから考えてみるということです。

第二に、目的に対して「ストレートに考える」態度を挙げます。本来あるべき姿への最短距離を目指すことで、理想と現状とのギャップに気づくことができます。優秀な問題解決者(コンサルタントやエンジニア)が等しく備えている資質だと思います。

第三は、「論理的に考える」態度です。ストレートに考えると同時に、抜け漏れはないか、客観的にみて妥当かといった角度から考えることも必要です。

ここまでは重要と思う順序で並べました。最後はこれらの根底に横たわっているべき態度で、「自尊心を保つ」ことを挙げたいと思います。権威に頼らず自分で考えろと口で言うのは簡単ですが、実践は難しい。これは、自分の考えに(権威以上の)価値を認めること、つまり自尊心がなければできないことです。
同時に、自分の考えの偏りや誤りをオープンに認めることもまた、自尊心がなければできません。高すぎる自尊心は頑なさにつながってしまいますが、自分の考えの誤りを認めたからといって自分が全て否定されたわけではないと考えられるのは、適切な自尊心があってこそです。

…というわけで、上記をリストにまとめ直しておきたいと思います。敢えてカタカナを使わずに書いてみました。

1. 【自分で考える】無知の状態から考え始める。知識や経験は、しばしば暗黙の前提となって思考の偏りや飛躍の種を撒く。知識や経験によりかからず、考えることによって結論を出そうとする。
2. 【真っ直ぐに考える】目的から真っ直ぐに考え下ろす。なぜ理想が貫けないのかを懐疑的に考える。
3. 【論理的に考える】自らのうちに「反対派」を育て、常に自分の見解と戦わせる。抜けはないか、客観的に見て妥当かを考える。
4. 【自尊心を保つ】権威に頼らない。自分の偏りや誤りを認める用意がある。

あとは実践あるのみ。お互いがんばりましょう。