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コンセプトノート

697. ほめる・叱るを越えて

「ほめる」と「叱る」の共通点

最近、上司としてどのようにほめたらよいか、叱ったらよいかについて考えをまとめる機会がありました。

両者は対極的な言動ながら、よく対で扱われるだけあって、共通点があります。

まず、どちらも「同じ目的のための異なる手段」です。その目的は「次の正しい行動に向けて、相手を動機づける」こと。ほめるのは、その行動を正しいと評価し、さらに強化するためです。叱るのは、その行動が正しくないと評価し、正しい行動へと促すためです。

もう一つ、どちらも「感情を伴っている」行為です。「ほめる」「叱る」で画像検索してみると、前者は笑った顔、後者は怒った顔ばかりが出てきます。

「ほめる」と「叱る」が果たすべき機能

あらためて「次の正しい行動に向けて、相手を動機づける」という目的に立ち戻ると、「ほめる」「叱る」には2つの機能が求められます。

一つは、何が正しくて何が正しくないかという基準を伝える機能。その基準が一貫していなかったり、一貫していても相手に伝わらなかったりすると、相手は次回何をすればよいかがわからないので、目的につながりません。

もう一つは、動機づける機能。一貫した基準に基づいてほめた/叱ったとしても、相手が意欲を喪失したり反発したりして正しい行動に向かってくれなければ、やはり目的にはつながりません。

問題は、というか今回考えたかったのは、この機能に及ぼす両者の感情的側面です。

ほめれば上司にほめてもらうことが目的化するリスクがあるし、叱れば反発・忌避・消沈といった結果を招くリスクもあります。また事前に「ほめよう」「叱ろう」と準備をすると、とかく「ほめる/叱るための会話」になってしまい、相手の話をよく聞かずに自分の結論だけを言ってしまったりすることもあります。

そのようなリスクを考えれば、「ほめる」も「叱る」もせず、淡々と次の行動へのフィードバックをするほうがよい。そういう考え方もあると思います。

ただ、副作用を気にして本来期待できる効果を放棄するのも本末転倒です。

ほめるか叱るかより、フィードバック→動機づけ

こう考えてくると、「上司としてどのようにほめたらよいか、叱ったらよいか」という問いは、単にほめ方・叱り方を覚えるだけでは答えが出たことにはなりません。これらの言動の目的に立ち戻り、

  1. 結果をもたらした行動についてフィードバックし、次の行動を考える
  2. その行動に向けて相手を動機づける

ことを念頭に置いて話をする。その過程で、動機づけのために適切な言動を選ぶ。そう考えることで、ほめるか叱るかという二元論にとらわれず、状況に応じた対応がしやすくなるように思います。