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コンセプトノート

128. 「運命の人」に出会える確率

「運命の人」に出会える確率

「○○で△△な企業があったら今すぐでも転職したい。そうしたら絶対にいい仕事して会社を儲けさせてやれるんだけどなあ…」
「『この人と結婚すれば絶対に幸せになれる』という相手は、1万人の中からでも、会った瞬間に分かるはずだと思うんだよね。でもなかなか…」
「事業立ち上げなら一通りやったから、『これだ!』という起業ネタがあったら今すぐ起業して、成功する自信はあるよ。でもネタがね…」

こういう話、よく聞きますよね。わたしもしばしば口にしているかもしれません。しかし実際、そうやって待ったり探したりすることにどれくらい期待したらいいのでしょう?

例えば2番目の話を例に取って、少し具体的に考えてみましょう。
Cさんの思い描く「運命の人」は1万人に1人しかいないけれど、
会えば99.9%の確率で「この人だ!」と分かるとします。
さて、ある日Cさんが「この人だ!」と思える人と出会ったとして、
実際にその相手が「運命の人」である確率はどれくらいでしょう?
とにかく確信したのだから、99.9%で運命の人に出会えたことにして
あげたくなりますが…。
行間を空けておきますので、ちょっと考えてみてください。

数学的には、実際にその相手が「運命の人」である確率はわずか9%しかありません(注1)。

事前確率という罠

なぜ我々はこの数字を小さいと感じてしまうのでしょうか。それは、前提となっている「1万人に1人」という確率(事前確率)の低さを無視してしまう傾向があるからだと説明されています(注2)。

ここで冒頭の3つの話を振り返って見ると、いずれも「Aという条件さえ整えば、非常に高い確率でBに成功できる」というパターンであることが分かります。
もし自分に「事前確率無視」のバイアスあることに気がつかなければ、非常に低い確率の事象を待ってしまうことになりますね。

このクイズからは多くの教訓を引き出せそうです。あまりまとめを付けてしまうと面白くないので止めますが、少なくとも「事前確率」というものの存在を意識することは重要ですね。そもそも、自分が何らかの前提に依存した期待をしているということすら気がつかないケースも、案外多いのではないでしょうか。


(注1)(注2)クイズは、『行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル』および『すぐれた意思決定』から修正して掲載しました。
確率の計算は、『行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル』に掲載されていた「ベイズの定理」に従いました。
「ベイズの定理」(ウィキペディア)