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コンセプトノート

206. 「腹落ち感」を得る ― シナリオ作りは粘り強く

ちょっと気の張る講演があって、かなり時間を割いて練習していました。

困ったことに、筋がなかなかまとまりません。
『パワー・プレゼンテーション』という本には、話の流れを作るために16の展開パターンが紹介されていますが、どれもしっくりこない。
プレゼンテーションではなくて喋りが主体なので、主だったStorytelling Methodの本も参考にしましたが、身に付いていないせいか、なんとなく嘘っぽい。

とりあえずメッセージの断片やイメージ写真をカード(スライド)に書き出して、話してみることにしました。

途中で別の言いたいことが浮かんだり、逆に言うべき事を失ったりして、最後までたどり着くことができません。スライドを4枚ずつA4用紙に打ち出して、A6サイズに切って、持ち歩いていました。

人間の頭とはよくしたもので、繰り返し繰り返し話しているうちに、流れの良い話の運びが自然に見えてきます。10日あるいは10回くらいやっていると、筋が通り、最後まで話せるようになってきた!

いざ話が流れるようになってみると、今度は、言っていることが当たり前の事ばかりのように思えてきてしまいます。しばらく統計をいじったりデータを探したりしてみます。しかし、別に数字を聞きたいわけでもないだろうと考える。ますます説得力が落ちるような気がします。

焦りつつ、とはいえこればかりもやっていられませんので、他の本に目を通していると、ハッとするような記述が目に飛び込んできました。ここと講演で言いたいことをつなげれば、面白そうです。少なくとも自分にとっては面白い発見です。

そんなこんなを繰り返し、少しずつ少しずつ自信が付いてくる。ようやく当日が楽しみになり始めます。

……以上が、わたしにとっては標準的な講演の準備作業です。我ながら進歩がないと思うのですが、こういう過程を経ないで本番を迎えてしまうと、何か腹の据わりが悪い。それが伝わると、聞き手も「腹落ち感」が得られない。結果は、芳しくない評価として甘受しなければなりません。

考えてみると、起-動線の「自分ナビ」もまさに同じです。1周目はマスを埋めるだけ。時間をおいて2周目、3周目と同じシートに立ち戻って行くうちに、自分なりのポリシー、自分なりの決断のシナリオができてきます。さまざまな決断のフレームワークやテクニックで武装しても、この「腹落ち感」を得るというプロセスは依然として曖昧で、時間が掛かります。

間違いなく言えそうなのは、聞き手や読み手を空想して訴えていくプロセスは、考えをまとめるために高い効果があるということ。人前で話す恐怖を軽減するために繰り返し読んだ、デール・カーネギーの名著『話し方入門』から引用します。

目の前に聴衆がいるというそのことは、頭の働きを明晰で鋭敏にする刺激とインスピレーションを与えてくれると。そうした場面では、自分では気づかなかった思想や忘れていた事例、思いがけないアイデアが、(略)「煙のようにあたりに漂い」、話し手はただ手を差し伸べてそれをしっかりつかめばいいのです。こんな体験はあなたにも可能です。くじけずに練習に励むならきっと。(p7)

わたしの数少ない経験では、まだまだ本番中にアイデアが漂ってくるようなことは起きません。その代わり練習の段階では似たようなことが起きます。聴衆を想像して語りかけていけば、何かが自分なりのメッセージをまとめる手助けをしてくれます。