「測定するだけで活動的になる」
『座らない!:成果を出し続ける人の健康習慣』 (トム・ラス、新潮社、2015年)という本を読みました。食べる・動く・眠るという、生活を支える3種類の行動のそれぞれについて、最近の研究成果と著者の経験を織り交ぜてアドバイスしています。
面白いと思ったのは、行動そのものの質をどう高めるかという観点だけでなく、周辺の工夫によって行動そのものが変えられるというコツが多かったことです。
たとえば「動く」。記録を取るだけで運動量が増えるという不思議な、しかし納得できる知見が紹介されています。
測定するだけで活動的になる
医学・社会科学の世界で秘密にされている事実が一つあります。測定という行為そのものが好結果を生み出すということです。実験のために研究者が被験者に対して「毎日の歩数を記録してください」と指示したとしましょう。この指示だけで普段よりも一日の歩数が増えます。
あるいは「食べる」。食べ物は小さい皿に、かつその色とのコントラストがはっきりしている色の皿に盛りつけるだけで、少量で満腹になるそうです。
そして「眠る」。「動く」は筋トレをする、「食べる」は噛む回数を増やすなど、意識すれば行動そのものを改善できます。しかし「眠る」という行動は意識的な改善ができません。何しろ本人がその最中に意識を失っているので。よく眠ろうといっても、眠りながら「よし、レム睡眠をもう少しがんばって多めに取ろう」などというわけにはいかないのです。
眠りに入る前にあれをする・これをしない。眠っている最中に部屋を暗くする・冷やしておく。眠りが浅くなったタイミングでアラームを鳴らす・明るくして目覚める。よく眠るためにできることのすべては、睡眠そのものでなくその周辺の環境整備にすぎないといえます。
「決める」の周辺を整える
「決める」についても、同じようなアプローチを試せるかもしれません。
「決める」というプロセス、つまり「どうやって決めるか」の改善はずいぶん考えてきました。しかし「眠る」の改善のように、プロセスの周辺環境をていねいに整える余地は大きいように感じます。
たとえば、「誰と決めるか」「どこで決めるか」「いつ決めるか」によって、意思決定の質は変わるのか。変わるとすれば、どのように変わるのか。「眠る」の改善のように、自分の身体に聞きながら変数を見定めてみたいと思います。