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コンセプトノート

693. 「これでいこう」と決めるときに人が気にすること

答えは一つのはずなのに

交渉のトレーニングの手始めに、シンプルな価格交渉のエクササイズをしてもらっています。

両者が等しく満足を得られる妥結金額は理論的には定まっていて、プログラム同士に対決させればすぐに収斂するでしょう。しかし実際には、そういった構造を見抜いた人同士の交渉であっても、結果は10組いれば10通りになります。

なぜこのような多様性が生じるのか。よくよく話を聞いていくうちに、単なる価格交渉とはいえ、当事者は様々な論点を意思決定に持ち込んでいることがわかりました。

たとえば、現実の商取引を模しているので、ほとんどの人は今回の交渉が今後の人間関係に及ぼす影響を考慮に入れます。今後を重視する人ほど慎重になり、相手が強気に出てくると「今回は譲っておこう」と考えます。

また、一定時間内に必ず妥結してほしいとお願いしているので、制限時間が迫るにつれて交渉はチキンゲームの様相を呈してきます。大まかにいって、真面目な人ほど先に譲歩しがちです。

交渉に限らず、「これでいこう」と決めるにあたって、人は何を気にするのでしょうか。

報酬を求めて行動を起こす際に人が考慮に入れる変数

『要するに何かを意図的に実行する際には、人間の脳は報酬の最大化を目指す一方、社会的に望ましい方法で努力やリスクの最小化に努めるのだ。』

認知科学者のカーメン・サイモンは、 『人は記憶で動く 相手に覚えさせ、思い出させ、行動させるための「キュー」の出し方』(CCCメディアハウス、2017年)でそのように述べ、報酬を求めて行動を起こす際に人が考慮に入れる変数を4つ特定しています。

  • 【努力】 報酬を獲得するため、自分はどれだけの努力を厭わないだろうか
  • 【時間遅延】 報酬を受け取るまで、自分はどれだけ待つことができるだろうか
  • 【リスク】 どの程度までの不確実性なら受け入れられるだろうか
  • 【社会的側面】 自分の行動に関連した相手の行動は、どんな結果をもたらすだろうか

報酬を求めて行動を起こす際に人が考慮に入れる変数*ListFreak

この変数は、たとえば人の納得を得ようと思う際に、報酬以外に伝えるべき点を教えてくれます。

  • 相手がその報酬を得るために必要な努力を示します。もしそれが相手の予想より大きければ、その努力に値する報酬であることを示す必要があります。
  • 相手がその報酬を得るまでの時間を示します。もしそれが相手の予想より長ければ、待つに値する報酬であることを示す必要があります。
  • 相手がその報酬を得るにあたってのリスクを示します。もしそれが相手の予想より高ければ、挑むに値する報酬であることを示す必要があります。
  • 相手がその報酬を得ることで相手のステークホルダーに及び得る影響を示します。もしそれが相手の予想より好ましからざれば、それでも追うに値する報酬であることを示す必要があります。