573. 三極発想

三極発想法

「三」で考える研究の一環として、東洋ガラスの社長を務められた佐伯 邦男氏の『三極発想法』を読みました。

発想法と銘打たれているので、発想の方法論が書かれているかと思いきや、本文を1ページめくるといきなりマンダラ風の図(三極図形)が出てきます。そして、そのまま突っ走っていきます。会議のあり方から購買動機からブレイクスルーに至るまで、幅広いテーマについて作りまくった三極図形を、短い解説を添えて紹介していく(だけ)という、疾風感のある本です。手取り足取り考え方を教えるのではなく、たくさん事例を見せるから興味のある人は自由に試してくれというトーンでした。

そこで読書メモを兼ねて、わたしなりに読み解いた三極発想法を簡単にまとめておきます。サンプルとして、本書の「頼れる上司」の能力をひもといた三極図形を引用します。

まず中心にテーマ(頼れる上司)を置いたうえで、外側の3角形の頂点に収まる3極を考えます。テーマによっては、過去-現在-未来のようなわかりやすい3極が使えますが、「頼れる上司」のようによく知られたフレームワークのないテーマではここが難関です。図では実行力・創造力・判断力が置かれています。最初からこの3極が見つかったというよりは、内側の6要素を埋めながら最終化されたのがこの3極だったのかもしれません。

テーマを取り巻く6要素の埋め方はかなり自由です(それが「発想法」たるゆえんかもしれません)。ただ図から明らかなように、6要素は大きく2種類に分けられます。3極それぞれに直結する要素と、2極の間に位置する要素です。

極に直結する要素である統率・先見・知識は、それぞれ対応する実行力・創造力・判断力を発揮している上司を象徴する言葉だと考えてよいでしょう。

面白いと感じたのは、2極に間に位置する3つの要素です。図ではABCとして隠してみました。たとえばAには何が入ると思いますか?実行力と創造力の両方が強く求められるが、判断力はあまり関与しない仕事……

著者の発想は「決断」です。XかYかを判断する根拠となる知識がない、あるいは知識だけではXもYも等価なので判断しがたい、といった状況をイメージすると、ここに決断が入るのはしっくりくる解釈です。ちなみにB(+実行力+判断力-創造力)には「責任」、C(+判断力+創造力-実行力)には「説得」が入ります。

このように位置関係を考えながら言葉を埋めていくと、「頼れる上司の3能力・6行動」ができあがります。もちろん異なる3極(たとえば心・技・体)を置いてみれば、また違う図解ができるでしょう。

箇条書き的フレームワークを超えて

せっかくですので、1つ練習をしてみます。『クリエイティブ・チョイス』でも紹介した、キャリアの方向性を見いだすためのPassion(情熱を注げるか?)-Ability(能力を発揮できるか?)-Value(価値を認められるか?)を3極に使い、「仕事の充実」というテーマで6要素を埋めてみました。

まず、個(要素)と全体(テーマ)の関係を考えやすいのがいいですね。今回はわりと堅固な3極を使いましたが、新しい3極を考えるときに、他の2極とのバランスを目で見ながらチェックしやすそうです。

もう一つ、2極の融合を積極的に促してくれるところが気に入りました。たとえば目的(+情熱+価値-能力)という要素は、「仕事の目的(大義・方向性)は、個人的に情熱を注ぐことができ、かつ社会から価値を認められる何かだ」というつもりでこの場所に置きました。こういう複合的な要素は、全体を個に分解していくイメージが強いマインドマップなどのツリーではなかなか表現しづらいものです。

3円からなるベン図と同じようなものだと言ってしまえばそれまでなのですが、実際に作ってみると感覚が違います。6要素が同じ大きさで並んでいる感覚や、対頂点をにらみながら2極を結ぶ辺上にある要素を考える感覚などは、この図形独特のものがあり、選ぶ言葉に影響を与えるように思います。