ミニレビュー
■ついに復刊!
1969年に原著が、翌年に和訳が出版された幻の本です。
もう1年以上前に『ピーターの法則』というコンセプトノートを書きました。
藤原和博さんが講演でこの本に言及され、
「社会人2年目にこんな本を読んでしまったことが、自分の人生を狂わせた」
とまで言われていたので、とても読みたくなって古本屋やネットや図書館をあたってみましたがどうしても手に入らない。
結局入手できないまま、このミニ書評のコーナーに「批評募集中」としてアップしてしまったのですが、どうやら他にも探している人が多かったらしく、書評がないままミニ書評屈指のクリック数を稼いでいました。
ところが先々月のこと。ダイヤモンド社の御立さんより復刊のお知らせをいただきました。とうとう12/15に書店流通となります。
■抱腹絶倒の階層社会学
そのピーターの法則とは、とても簡単なもの。
階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する。
これがいかに例外を許さない強力な法則であるか、
しかしそれでもこの法則から逃れるためにはどうしたらよいか、
この2点について詳細な、そして誰もがニヤリとしてしまうような観察と考察がなされています。
■ピーター博士は実在したのか?
何しろメッセージからして真実のような、でも反論したくなるようなテーマなので、ケチをつけようと思って読むといろいろ穴もないではありません。
読み進めるうちに、大ボラをまじめくさった顔で吹き続けられているような気になってきました。
「もしかしたらピーター博士は架空の人物で、共著者のレイモンド・ハルの創作かもしれない」
と思い始めました。つい最近、自分で書いた本を「友人のアメリカ人の著書を訳した」といって訳書として出版してしまったというイタズラを聞いたばかりだったので、余計にそう思ったのかもしれません。
なにしろハル氏のはしがきによると、
・自分はかねがね世の中に無能な輩が多いことを不思議に思っていたのだが、
・先日偶然にも劇場で、
・「長年にわたって無能の研究に打ち込んできた」ピーター博士に出会って感動し、
・彼を口説いて原稿をもらい、
・編集をしたのがこの本である。
ということになっています。
いかにもホームズもののパロディなんかにありそうな仕立てじゃないですか?
…ネットを検索してみた結果、確証はつかめませんでしたが、どうやら実在した方のようです(レイモンド・ハルはイギリスで生まれてカナダのブリティッシュ・コロンビアに移りましたが、ローレンス・ピーター博士も一時期ブリティッシュ・コロンビア大学の教授をしていたようなので、劇場で出会う機会はあったかもしれません)
トリビアついでにもうひとつ。「無能」は原著では何という単語なのか、気になったのでamazon.comのLook inside this bookで調べてみました。
> “The Peter Principle”
“incompetence”、でした。
(ダイヤモンド社 御立英史さま、ありがとうございました)