決める力を掘り下げていくと、「今・ここに意識を傾注する」力の重要さが浮かび上がってきます(参考:「「明晰さ」の条件」「意志の源は注意」)。ここ1年ほど、その力を高めるためのエクササイズを試行錯誤してきています。たとえば仕事の最中に、必要に応じて「今・ここに意識を傾注する」ことができないかどうか、模索してきました。
その中で最も効果が高いと思えるのが「音を立てない(で行動する)」というエクササイズ。これは、アイディアとしてはとても簡単。ですが実行はなかなか難しい。
たとえば朝の仕事始め。オフィスのドアを静かに開け、静かに閉め、椅子に静かに座り、PCの電源を静かに入れ、引き出しを静かに開け、ペンを静かに取り出す。これが上手くできる日は、すでに「今・ここに意識を傾注する」ことができています。
しかし、何かイヤなことがあったりして「心ここにあらず」なときは、これができません。オフィスのドアをバンと開け放ち、閉まるがままにまかせるか後ろ手にバンと閉め、椅子にドシンとすわり、PCの電源を叩きつけるように入れ……というのは大げさにしても、自分の動作に意識を向けることを忘れてしまいます。
もちろん、完全に音を立てないわけにはいきません。日常生活の中でのエクササイズなので、音を立てないために動作を緩慢にするわけにもいきません。あくまでもふだんの生活の中で、音をなるべく立てないように動作に意識を向けるということです。
たとえば机にペンを置くとき。ポイと投げればコロンと音がします。音を立てないようにするためには、ペンから目を離さずにじわりと置いて、ペンが完全に机の上に乗るまで手を離せません。意識は今・ここにとどまらざるをえないのです。
これを数分続けるだけで、「今・ここに意識を傾注する」準備ができます。たかだか1年間の実践ですが、わたしには大きな効果を発揮しています。心を落ち着かせてよく考えたいときなどに、ぜひ試してみてください。