誰もがどうにかして自分を知りたがっている
感情知能の研究にもいくつかの学派がありますが、共通して「これが基礎」と挙げられる要素があります。自己認識です。
自己認識といっても幅の広い言葉です。ダニエル・ゴールマンの著作から引用します。
われわれの感情がわれわれの行動にどのような影響を及ぼしているかを認識する能力は、基本的な感情コンピテンスのひとつである。(略)カウンセラーの自己認識について研究したリチャード・ボヤツィスはこう述べている。
「これは焦点を絞り込む能力と言えるだろう。つまり、自分がいま何を感じているかを示す内部の計器や微妙なシグナルを読みとって、その結果を、自分がどう行動していくかについて継続的にガイドする指針として活用することを通じて発揮される能力なのだ」と。
ダニエル・ゴールマン『ビジネスEQ―感情コンピテンスを仕事に生かす』
この能力を極限まで高め、微細な感情の動きや、その源までも感じとろうという試みの極北に、ブッダがいます。
ブッダが社会に残した最も偉大な貢献は、瞑想の力を示して見せたことだ。
つまり、意識の本質を見出す手段としての気づきが引き起こす奇跡である。 根本的に、自己認識によって露になる自己の特質以外に、信ずべきものは何一つない。
アラン・クレメンツ『ダルマ・ライフ―日々の生活に“自由”を見つける方法』
自己認識という言葉の意味合いを大きく取れば、「自分を知る」となります。「自分を知る」ことが哲学の究極の目的である、という言葉もあります。
感情、思考、行動から自分に気づく
先日読んだ本にもやはり自分を知る話がありました。自分を知るとは何をどう知ることなのか、ざっくりつかむために分かりやすい整理のように思えたので、要約してみました。
- 【感情】 「いま・ここ」での気持ちに気づく。感じ方は、自分らしさの理解と自己表現の手がかりになる。
- 【思考】 自分の言動がどのような考え方に従って出ているかを確かめる。考え方やものの見方の奥には、体験から作られた原則があり、理想化された原則は「思い込み」となる。
- 【行動】 言語と行動の不一致に注意を向ける。言動の矛盾やズレを認めて表現することは、自分の感情や思考を知る手がかりになる。
自分とつき合う3つの視点 – *ListFreak
この中では【行動】という項目に興味をひかれました。というのは、ふつう人間の精神的な働きを分類して感情・思考とくれば、三つめは意志の指定席ですが、ここでは行動が挙げられているからです。
行動は表に出てくるものなので、感情や思考よりも測定が簡単です。ですので自分の行動をよく意識して、行動をきっかけにこんな問いを発してみることは、自己認識力を高めるトレーニングになりそうです。
- 何をしたか。そのとき何を感じたか。(感情)
- 何をしたか。どういう前提に基づいてそれを選択したのか。(思考)
- 何をしたか。いわゆる「言っていることとやっていることが違う」状態ではなかったか。(行動)