『経営意思決定の原点』では、組織の意思決定がうまくいかない状態を下の5つのパターンに分けて「病状」と呼び、それぞれ10ページ強の解説を添えています。
- 決められない:優柔不断
- 決め急ぎ:拙速
- 決めたはず:決定事項が実行されない
- 決めっ放し:決めたことの評価・見直しの欠如
- 決めすぎ:頻繁な変更による資源の浪費
組織の経営意思決定に見られる5つの病状 – *ListFreak
あるひとつの決断を振り返ってみれば、程度の差こそあれ「優柔不断」か「拙速」か、あるいは「頻繁な変更」だったと分類できるでしょう。そうであれば、個々の決断はすべからくいずれかの病状を示すことになってしまいます。実際、人間の決断が簡単に偏ってしまう(同書の前半に優れたまとめがあります)ことを考えれば、そのように考えておくくらいがちょうど良いようです。
健康な決断はない。どう決めても、それだけでは正しくない。これは、心に刻んでおいて損のないことだと思います。ただし、健康な意思決定をすることはできます。決断は「動作」ですが、意思決定は「状態」です。決断の正しくなかった部分を改める決断を行い、結果として組織が維持・成長できていくならば、その組織は健康な意思決定をしていることになります。
意思決定を「状態」と見なすのはちょっと言葉遊びのようでもあります。ただ言葉はどうあれ決断という「動作」と、健全な意思決定ができているという「状態」を分けて考えるのは重要なポイントだと思います。
我々は「個々の決断(動作)の質が高まれば、組織の意思決定(状態)は健全になる」というテーゼを信じがちですが、必ずしもそうではありません。個人の決断の質は組織の決断の質を保証しません(グループシンク)し、上のリストが示唆しているのは、組織の決断はそれ単独では正しい意思決定を保証するものではないということです。
目的はあくまで、健全な意思決定ができる組織という「状態」を作り、維持すること。ここから目を離さなければ、個々の決断の成否にこだわりすぎたり、決断を放置したりすることを減らせるのではないでしょうか。